Nico / Chelsea Girls (1967)

人気 ★★★★  個人 ★★★★  Genre : Folk Rock

先日モローについて書いた時、『出現』を見た瞬間にNicoのことを思い出しました。ヨハネの首を求めたサロメと、彼女を重ねてしまったのは、自分のなかでFemme Fatale(運命の女)という言葉によって二人が結びついているからです。

Nicoは1938年にドイツに生まれ、ファッション誌Vogueの表紙になるほどのスーパーモデルとなりますが、モデルとしての自分に疑問を感じて音楽活動を始めます。その頃のニューヨークではAndy Warholと彼のファクトリーに多くのアーティストが集まっていました。自然とそこの常連となったNicoは、Velvet Undergroundの1stに参加。そのVelvetsのLou ReedJohn Caleとの恋愛も絡みながら、彼らの協力を経てこの美しい作品は作られました。
先述の二人の他にも、Bob DylanJackson Browneが曲を提供していますが、とにかく、どの曲もメロディ、歌詞、歌ともに素晴らしいの一言に尽きますね。

なぜ、彼女が"Femme Fatale"などと呼ばれるのか、それは彼女の声を聞けば、すぐに分かるでしょう。
キャリアの華やかさとは無関係な、地下世界に響く声、宿命を背負ったような沈鬱な歌、これこそ彼女が表現したかったものだと考えれば、彼女は男達にチヤホヤされたり、逃避して自分の世界に篭ってしまうような、そういう「どこにでもいるような女」とは違う、恐ろしいほどの業を背負った女性だと思わずにはいられないからです。
時代のせいもあるのでしょう。激動の時代には彼女のような運命の女が似合います。必要とされるのでしょうね。
それにしても、女性とはやはり私には謎としかいいようがないものだと思い知らされます。時代の象徴でありながら、彼女の存在は幻想的で、それでいて恐ろしいほどリアルなのですから。