julien2008-04-25

0012 A-Ha "Take On Me" (1985)

この人達はノルウェーのバンドで、最初にリリースされたヴァージョンとよく知られたこのヴァージョンが違って、いかにもニューウェイヴなエレポップになっているのも、渡英後に、同じく北欧のアバを意識してアレンジされなおされたせいなのかなと思う。日本ではほぼ一発屋扱いだが、イギリスではこれ以外にもヒット曲を飛ばし、ある時期にはライブに19万人も動員してギネス記録になったというほどのバンド。
けれど、その理由はやはりこの曲にあるだろう。イントロのインパクトでいえば、これに匹敵する曲はほとんどないだろうし、ファルセットが印象的で流麗なヴォーカル、切なさを持ったメロディ、これ以上ないほどに効果的なシンセ、シンプルな打ち込みのリズムとのバランスなど、これだけの完成度をもったポップな曲も滅多にない。爆発的に売れる曲の要素を全て兼ね備えた歴史的なスーパーポップミュージック。この感覚をお手本にして、表面的じゃなく自分のものにできれば、一流のポップクリエイターになれるだろう。

数年前に宇多田ヒカルがライブでカバーしているのを聴いたことがあるが、彼女のポップでソウルフルなヴォーカルと絶妙に絡み合って素晴らしかった。そう思ってから聴けば、なんてソウルなんだろうと再発見だった。ピコピコなエレポップのこの曲には実はソウルの血が流れているのだと分かった。
歌詞はなんてことないのだが、彼女と離れようとする去り際の感情、つなぎとめようと動く感情が目に見えるようで感動的だ。「Take On Me」は、訳せば僕を受け入れてほしいだろうけれど、Take On はTake Offと繋がって聴こえる。僕のもとにおいでというようにも聴こえる。
いつでもそうだろう。感情はシンルなほうがずっといい。
個人的にもとにかく大好きな曲、こういう感情と共に、ずっと聴いているだろうと思う。

この曲について欠かせないのは、80年代初頭にMTVが開局して、音楽を映像と一緒に受け入れるスタイルが浸透していくなかでのプロモ。漫画と映像を混交させたものだが、その出来のよさと曲の良さが合わさって爆発的なヒットにつながった。そういえば、10年以上前にアメリカにいた時も、この映像が懐メロとしてよくかかっていたのを思い出した。