完全なこと

julien2008-02-26

0006 Fairground Attraction "Perfect" (1988)

数年で解散したバンドの、世にも幸せなたった一枚のアルバム、その一曲目を飾るのがこの大ヒット曲。ワンヒットメイカーと呼ぶには惜しすぎる天才バンドの、このアルバム全体を包む幸福感はなんだろうかと思う。
歌詞はなんてことない恋愛への希望を歌うもの。
僕は半分になったハートなんて欲しくない、っていう出だしの言葉はパーフェクトだが、要するに失恋してしまい、若者はミスばっかりする、でも、恋(正しくはLove Affair)はパーフェクトじゃなきゃ、という強がりに似た感情、そういう歌。
1988年の英国なんて、英国病という不景気が果てしなく続く暗いトンネルの中だったんではないだろうか、ザ・スミスが極めて内省的で美しい歌を作るのをやめた翌年に、この軽やかなでいて、それでいて意思の強いリズムにサウンド、エディの美しいヴォーカルがどんなふうに巷に広がったか、想像するのは簡単。
けれど、それでいいんだろうか。なにもかも一過性に消費されてしまう空気のなかで、この曲はどこか抵抗しているようにも感じる。サビのラストの辺りでのマイナーコードは、単なる恋への強がりだけでなく、なんともいえない諦観を感じてしまうのだ。パーフェクトなのは恋愛でなく、この瞬間の感情に過ぎないのだ、と言わんばかりに。
この曲は、だから、どこか孤独です。パーフェクトであることは、調和や、周りに溶け込むことから逃れてしまう。だからこそ、この曲は永遠を与えられてるように「パーフェクト」なのだ。