The Velvet Underground / Loaded (1970)

julien2008-01-31

気分転換にたまたま聞いていたのがこれ。どうやらヴェルヴェッツの4枚(正しくは5枚ですが・・・無かったものになっているので)のアルバム中、最も人気がないようですが。
彼らの作品を通して聞いていると、名作とよく言われる1枚目の気だるさ、2枚目のノイズ・コンクレートのような嵐を越えて、3枚目の穏やかさと柔らかさに意表を突かれるので、この作品にはあまり印象が残らないのが正直なところ。
1曲目から穏やかで、最初の頃の彼らはなんだったのかとさえ思う。ヴェルヴェッツは、アンディ・ウォーホールがプロデュースしたとか、ダークな世界を歌う歌詞だとか、激しいノイズサウンドだとかで、要するにパイオニア的な存在として評価されているようだが、1枚目を現在に至るまで名盤たらしめているのは、そんなことではなくて、単純に曲の良さだろう。少なくとも、リアルに衝撃を受けたわけではない僕らにとっては、曲の良さ、音のインパクト以外の部分ではなかなか聞けないし、良いとも思えない。
3枚目での穏やかな方向転換の理由は単純で、有名現代音楽家の弟子でもあったジョン・ケイルが抜けたから。これは分かりやすい。ルー・リードは、素晴らしい詩人ですが、音楽的には結構シンプルなロックンローラーであり、超一流のメロディ・メイカーなので、折り合いのつかなくなった相棒のケイルが抜ければ、それがそのまま出てくる。3枚目はそれなりにやる気があったから、作品としてもまとまっているが、4枚目になるとダれてきて、作品としてはなんとも物足りない感じになる。
この4枚目についてよく言われるのは、ケイルの代わりに加入したダグ・ユールが台頭したせいでダメになったとかいうこと。しかし、どうでしょうね。
ダグ云々ではなくて、リードの問題だと思う。そう考えると、この作品のどこが駄作なのか分からなくなってくる。
"Sweet Jane"はまるでボブ・ディランですが、"Rock & Roll"と並んで素晴らしい出来。他にも美しいメロディの節を持つ曲は多い。ヴェルヴェッツの持つ力からいけば、この程度では(冒険が全く無い)消化不良でしょうが、リードの天才さはちゃんと出ている。
作品としてのまとまりはあまり無い。曲を寄せ集めて作品にしたという感じもある。しかし、そもそも、そういうグループではなかったのか。

人間いつでも全力投球ではいけない。けれど、美しいメロディは生きていく上で欠かせない。空を見ながら散歩して、軽く口笛を吹くように音楽がそこにあればいい。そんなふうに音楽があってもいい。リードはそんな感じでこれらの曲を書いたんじゃないかと思う。
この軽さは、適当だとかいい加減なものではなく、音楽を愛している人の日常そのものなんじゃないか。
ロック転換期の1970年、ニューヨークの風にリードはこんな感覚を無意識に乗せたのではないかと思った。