Rock Instrumental

この国に関して言えば、ビートルズよりも先にベンチャーズがロックンロールのブームを巻き起こしたせいか、ビートルズっぽい音よりもベンチャーズっぽい音のほうが流行ってたんじゃないかと思われる。なので、日本におけるベンチャーズ・チルドレンであろう加山雄三ビートルズのメンバーと一緒に写っている有名な写真(これはとても格好いい)を初めて見た時、なんとも不思議な感覚だった。
ロックンロールの定義は難しいというより不可能なので、しょせんは一つの見方に過ぎないとしても、やっぱりエレキギター特有の音は重要な要素なんではないだろうか。ボブ・ディランロックンローラーとなった(とされる)のもLike A Rolling Stoneでエレキーに持ち変えた時なのだから、エレキギターという楽器を中心に歴史を見ていくのは面白いと思う。なので、ヴァン・ヘイレンが超重要グループなのは当たり前なんだと(ラウドが苦手な)自分に言い聞かせる。まあ、いいや。
ところで、いま考えてみると不思議なのは、60年代初期のアメリカポップス黄金時代にインストのロックがひとつのグループを形成していたことであって、ほぼ声なしでエレキがなんとも様々な音を立てていたことです。もちろん、いまでもイングヴェイ・マルムスティーンのような人がいるし、70年代にもジェフ・ベックのような人がいたことはいましたが、こういうロック・インストは別にブームにはならなかったし、個人的に神のような技量を持ったギタリストがいたってだけでしょう。対して60年代は、デュアン・エディ、リンク・レイ、チャンプス、ファイヤーボールズ、ヴェンチャーズ、ブッカーT&ザ・MGズ、ジョニー&ザ・ハリケーンズ、サーフィン・ホットロッドの世界でのアストロノーツにディック・デイル&ヒズ・デル・トーンズなど、百花繚乱状態。

そしてその音こそが衝撃をもって受け入れられたのが日本であって、例えばアメリカにおける居様な程の低評価に関わらず日本でのヴェンチャーズは神以外の何物でもない。ヴェンチャーズがいなかったら今の日本の音楽は100%ありえない。そして、その理由は、徹底してエレキギターの音、これが全く新しいものとして純粋に受け入れられるには、ロックンロ−ルがR&Bから生まれたことなんてこととは縁が遠い(ように)聴こえるほうがずっとよかった。そういう場所は日本しかない。それは、日本のGSを聞けば分かるし、エレキギターの"音"の向こうに昭和歌謡的なムードさえある。加山雄三の曲にはその辺りがものすごく分かりやすく出ている(ちなみに僕は加山雄三は凄く好きです)。一方で、ビル・ヘイリーやプレスリーの初期の音は、分かりにくかったんじゃないかと思う。

日本人にとってR&Bのリズムが馴染みがなく、それこそモータウンがウルトラポップな曲を届けてくれるまで、実際のところはさっぱり理解不能だったんではなかろうか。ゴールデンカップス等のごく一部を例外として除けば、日本のGSにグルーヴィーな部分はほぼ皆無なのはその辺りに理由がありそうだ。

まあ、実際のところ、ヴェンチャーズにはグルーヴィーな部分が相当にあるので、この辺りはちゃんと理解されていなかったんでしょうけど。


とりあえず、60年代のロック・インストは色々考えさせてくれますが、こんなことは一切考えずに聞いているのがずっと良いです。
私的なベストトラックは以下(詳しい人から見ればベタベタ)。


1. B.Bumble & The Stingers / Bumble Boogie
2. Booker T & The MG's / Green Onion
3. The Champs / Tequila
4. Duan Eddy / Rebel Rouser
5. Johnny & The Hurricanes / Red River Rock
6. Link Wray & The Wray Men / Rumble
7. Link Wray & The Wray Men / Jack The Lipper
8. The Mar-keys / Last Night
9. The Marketts / Out Of Limits
10. The Routers / Let's Go
11. Sandy Nelson / Let There Be Drums
12. Santo & Johnny / Sleep Walk
13. The Ventures / Walk Don't Run
14. The Ventures / Slaugter On 10th Avenue
15. Dick Dale & His Den-Tones / Let's Go Trippin'
16. Dick Dale & His Den-Tones / Miserlou


このうち、9,14,16はあらゆる曲の内での私的ベストトラックの上位に確実に入りますが、特に14はロックンロールとしてみても6と並んで最重要曲なんではなかろうか。エレキギターで表現できる音世界の一つの極限を描いてるように思えます。よくこんな複雑かつウルトラポップな曲を生み出したものだなと。とりあえず、老若男女問わずにロックンロールが好きな人なら、ヴェンチャーズの有名曲はほぼ全て必聴。ある意味、僕らの世代だとビートルズの10倍聴かれてないんじゃないかと思う。当時に大勢の方が衝撃受けたのはある意味当然。ヒップホップの洗礼受けた現代も、僕らが日本人だってことは変わらないんだし。