The Beatles / Beatles For Sale (1964)


ビートルズの4枚目。でも、昔はこれ聞いてもよく分からなかった。
前作が同名映画のサントラでもある『A Hard Day's Night』、次作が同じく『Help!』ってこともあって、どこか地味な印象もある。カバー曲も異常に多い。
しかし、ですね。たとえばストーンズなんかを聴いた後でこれを聴くと、ビートルズが実は相当に黒いのが見えてくるし、その上でビートが小刻みでおもいきりロックンロールしてるわ、根っこにソウルが流れてるわ、ファンキーだわで、演奏が下手だとか、いまひとつクールじゃないとか、そんなのはどうでもよろしくなってくる。
この人達の場合、ポップの度合いが凄すぎるので、ちょっと聞いただけじゃその辺のとこが見えてこない。そんな意味では、代表曲の少ないこの作品や、2ndなんかにも色んなものを感じる部分が溢れてて、やっぱり聞かない作品はないんです。
しかも、ポップのお手本のようなメロディやリズムに、びっくりするような歌詞が付いている。「僕は負け犬」なんてふうに歌ってる。無敵だった時代に、そんなふうに感じるてい感覚もある。単にメロディ書けるよ、なんてだけの理由で売れてもダメなんでしょう。
感覚のなかにリズムが染みこんでないと、意識しなくてもそれが溢れるようでないと、そのためには音楽が好きで好きでたまらなくて夢中になってないと。これは、そういうアルバム。
チャック・ベリーのカバーにしても、アレンジもなくオリジナルと大して変わらないんですが、負けていないってことが実は凄いテンション。こっちがオリジナルだと思ってた人も大勢いるはず。
僕は、1曲目の"No Reply"がある限り、何度でもこのアルバムを聴いてしまう。切ないんだけど、サビのとこのギターだけで説明できてしまうものはあるわけだ。
続けて、"I'm A Loser"、"Baby's In Black"といく。ジョンとポールの歌があって、声があって、シャウトがある。キラキラ光を浴びてる負け犬の男と、喪服を来た女の子の歌。
やっぱり説明できないんだけど、言葉や音楽は、それに寄り添うように、どんなものよりも雄弁なのかもしれない。
こんな音楽があって、今があって、やはり僕は幸せだ。一人じゃないって感覚は、いつも新しいものを見つけられるから。