Saint-Saëns / Introduction Et Rondo Capriccioso Op.28

Arthur Grumiaux (v) , Manuel Rosenthal / Orchestre Des Concerts Lamoureux (1963)


ヴァイオリンは典型的なヴィルトゥオーゾの演奏が好き。疾走する情熱というよりも、音に漂う色気がいい。演目もサン・サーンスの超有名かつ難曲だからこその、過剰に演じることのない自然な空気が際立っていて良い。このグリュミオーは、ハイフェッツに較べると、リズムを抑え、フレーズを少し引き伸ばしながら弾いている。それが壮絶の一歩手前で立ち止まって、余裕のある気品のある大人の演奏。悪く言えば抑揚が効きすぎ、良い意味では端正で洗練されていて美しい。
それで凄く思うことは、私が持っているのはラロのスペイン交響曲とサン・サーンスのヴァイコン3番のカップリングに入っているものなのですが、前者がスペインの情熱が溢れるいかにもサラサーテに捧げられた曲なのに対し、後者は同じサラサーテに捧げられた曲とはいっても、生粋のフランス人のサン・サーンスだけに、作品の輪郭はずっと端正でスマート(要するに古典的)。なればこそ、後者拠りのロンド・カプリチオーソだってあっていいと思うのです。まあ、解釈の問題なので、どっちが正等なわけでもないんですけど、大して知らない私には、グリュミオーのような演奏は珍しいし新鮮に感じた。