Berlioz / Symphonie Fantastique Op.14a

Charles Munch / Orchestre De Paris (1967)


久しぶりにN響アワー見たらこれをやっていた。振っていたのはドイツ系の人でしたが、デュトワが辞めてからもフランス系の曲をちゃんとやってるあたりは偉い。
この曲はメランコリックというよりほとんど狂気に近い雰囲気で、個人的にはとても好き。古典主義を超えてロマン主義初期の交響曲だとか、斬新なオーケストレーションだとか、史上初の標題曲にして、個人の苦悩がテーマだとか言われますが、えぐい曲だとも思う。
ベルリオーズが激しく恋をして、あげく相手にはそっけなくされ、その苦しみを幻想として視覚化、聴覚化したと言っても、最後の魔女たちの夜会のシーンに出てくる恋人は化け物の姿にされてるし、どういう性格してるんだとも思いますが。幻想交響曲というより、妄想交響曲とでも言ったほうがしっくりくるのでは。
でも、やはり不滅の名曲で、ミュンシュとパリ管の演奏も不滅の名演。この演奏は、甘美に酔いしれるだけじゃダメと言っているかのよう。強弱が異常に激しい原曲の感情の流れを途切れることなくつなげる様は、他の誰の指揮を聞いても敵わない。響きの美しさ、対比される沈黙も、ただの無ではなく狂気を常に宿らせる。
それにしても、人はこんな激しい感情を持ちうるんだろうか。私はこの曲に埋没することはできそうにないので、結局は、音響を超えてどこまで感じ取れるのか、という勝負な気がする。第2楽章の舞踏会で、現実と幻想の違いさえ忘れそうになる自分との。