J.S.Bach / Johannes-Passion BWV245

Karl Richter / Münchener Bach-Orchester , Münchener Bach-Chor

Evelyn Lear (S), Herta Töpper (A), Ernst Haefliger (T), Hermann Prey (Br), Kieth Engen (Bs) (1964)


昔はどう聞いていいのかさえまるで分からなかった曲。BGMにはさすがにできないし、かといって理屈ばかりが先行してしまったり、宗教的なものを素直に受け入れることに躊躇したり。何より、重い。そして聞いているだけで緊張する。
しかし、昨日ずっと座ってこれを聞いていた2時間超は凄い時間だった。イエスが裏切られ捕縛されてから埋葬されるまでのドラマ。キリスト教の宗教性も何も分からなくても、ただそれに立ち逢えばよい。バッハがどうこう、宗教感情がどうこうなどではなくて、ドラマと人間の声にただやられた。「精神性」などと曖昧でいい加減な表現を使いたくはないけど、底知れないほどに人間が持つものは深く、そしてそれに共鳴することがよく分かった。それをより感じるためにも、これは今後も繰り返し聴く。考えることも、動くことも、この辺りから始めないわけにはいかないわ。とにかく重いが、それがどうしたという。ここにしかないものはあるのです。ドラマはすでに死にたえた、と言われようとも。