Sibelius / Cocerto For Violin And Orchestra in D minor, Op.47

Anne-Sophie Mutter (v) , Andre Previn / Staatskapelle Dresden (1995)


これを最初に聞いたのがいつだったのかは忘れましたが(録音されてすぐ後くらいかも)、最初はシベリウスの良さがいまいち分からなかった。曲の構成は独特だし、最初にカデンツアのごとくヴァイオリンソロの超絶技巧が来るという不思議さが、昔はどうも分からなかったようで。まあ単にガキだったんですが。それが今じゃ、こんな良い曲もないっていうくらいに好きです。何よりヴァイオリンの凄さをよく引き出す。この楽器にしか歌えないものを。単にシベリウスフィンランド人だからかもしれませんが、秋より冬が似合う曲。ぬくぬくと暖まって聴く曲じゃあないです。
プレヴィンの指揮はさすがに巧い。スマートで均整の取れた伴奏で、ムターのヴァイオリンをおかしいくらいによく歌わせる。生演奏だと、諏訪内さんのをサントリーで聞きましたが、あの方のは音をそのままに拾い上げるような感じで、要はクールな印象でした。あれも幸せな時間だった。一方、それに較べると、ムターのは恐いくらい。ジャケットも危険な雰囲気だし(銀座のクラブ?)。ただ、僕はこっちのほうに軍配上げます。ムターも凄いけど、プレヴィン(&シュターツカペレ)がいい。
とりあえず、この曲は女性が演奏したほうがいいですね。どこか抑えられた情念が、瞬時に燃え上がり、刹那にまた抑えられる。そういうのは男には無理な気がする。まあ、バランス感覚なんでしょうが、どちらにしろきわどいくらいに絶妙のバランスが絶対に必要。なければ、確実に演奏が壊れる。