ポップス奥の細道 〜二十二日目

114 Elvis Presley / "Are You Lonesome Tonight?" (1960)

115 Elvis Presley / "Can't Help Falling In Love" (1961)


60年代もエルヴィスは相変わらず絶好調。特に60年に徴兵から戻ってきてからもヒット曲連発。前にここに入れる基準が全米40位以内とか書きましたが、この人の場合亡くなるまでに112曲もあって凄まじい。
この2曲は彼の代表曲といっていい超有名バラード。ロカビリーはどこいったというくらいに渋くて甘い。素晴らしいが、複雑な想いでいたティーンもいたことでしょうが、それが3年後の英国勢の襲来を準備します。
そういえば、エルヴィスはセックス・シンボルで腰を振って大人達の眉毛をひそませたなんて言われる割に、60年代のこの優しさはどうだろう。67年に初めて結婚した時も、相手が未成年だったこともあって、結婚するまでは何もしなかったそうです。「今夜は一人かい?」っていうのは、猥雑なぐちゃぐちゃしたものなんかではないのである。責任を自覚した大人の歌。ロックだって普通に成長する。
そして、「好きにならずにいられない」って気持ちをここまで歌った曲が他にあるか。この人は単なるチンピラでも破壊者でも改革者でもなく、超一流に人を愛せる人なのでしょう。さらにエルヴィスは黒人が大好きで、彼のおかげでアメリカ人の多くが目線を下げたんだ、というのはジェームズ・ブラウンの言葉。彼が死んだ時にアメリカは大事な一部を失った、というのはカーター大統領の言葉。
一方で、どこかの国の首相がエルヴィス好きだと言うたびに、俺はあーっと叫び出しくなるような言いようのない怒りを感じるんですが、彼は何を感じ取ってるんだろうか。

116 The Everly Brothers / "Cathy's Crown" (1960)

117 The Everly Brothers / "Crying In The Rain" (1961)


50年代末にロックンローラーが次々と亡くなる中で、エヴァリーズは60年代も絶好調。
116は初めての自作の全米1位。個人的に破格に好きなので載せてしまう。特にキャロル・キングが書いた117のメロディは何度聞いても切なくなる。
彼らは海外では別格扱いの割に日本ではさっぱり。輸入盤ではベスト盤が星の数ほどあるのに、国内盤ではほとんどない。僕はボックス・セットを持っているので、百曲単位で聞いてますけど、堕曲無しの凄いクオリティ。ここからヒット曲だけ選んでも凄いベスト盤が出来そうなのものなのに、この扱いの温度差はなんだろうか。理由は簡単で、ベースがカントリーだからでしょう。まあ、気にせずに聞きます。