ポップス奥の細道 〜二十一日目

112 Maurice Williams & The Zodiacs / "Stay" (1960)


時代は完全にソウルへと移行していたが、史上最も短い全米一位曲の一つであろう彼らの代表曲もそれに倣う。わずか1分39秒。100秒にも満たないのに焼きつく印象には影響しない。
これは煙草が燃える間のことを歌ったもの。その間だけ傍にいてよ、という歌。だから、曲も合わせて短いのだとしたら、こんなセンスの曲もそうはない。スロウなロックンロールであるようなR&Bハーモニー・ポップ。
ただ、そのせいで喫煙を広めるという理由で目くじらを立てた人間も大勢いたらしい。それなら、プラターズの「煙が目にしみる」はどうなる。
煙草の嫌悪ではなく、詩情を解せない人間というのはタチが悪いというのは昔も今も変わらないということ。

113 Marv Johnson / "I Love The Way You Love" (1960)


ジャッキー・ウィルソン同様ベリー・ゴーディーJrプロデュースの初期シカゴソウルのシンガー。聞きやすいスタンダードなポップ・ソウル。
ジャッキーをもうちょっと大人にしたような印象です。イントロからずっと鳴り続けるピアノとフルート?が可愛いんですが、ドラムは妙に重く、さすがはモータウンといった感じ。
そういえば、昔はブラック・ミュージックを聞く時はどこか構えていたのに、最近は相棒のおかげで当たり前のように聞いてる。というより、これがないなんていうのがありえない。パワーコードもいいけど、グルーヴもいい。そして、僕はポップ・ミュージックが何より好きだ。時代を映して、時代に映されて、それでいて誰にでも入ってくる。人を選ばない。
昔は人を選ぶものばかり聞いていたのに、感覚ってよく分からないもんだな。