ポップス奥の細道 〜十七日目

今日は大好きな二人のロックンローラーについて書けるので嬉しい。ただ現在では二人とも扱いがとにかく低いというか、どうにもならんほど軽視されてる気がしますが。ちなみに、どちらとも80年代終わりのスーパーグループに加入します。が、まもなく死んでしまう。

088 The Brothers Four / "Greenfields" (1960)


男性4人組のコーラスグループなのにドゥワップではない。日本のブルーコメッツやクールファイブの原型のような感じ。モダン・フォークの立役者と言われるブラザーズ・フォーのデビュー曲です。
つまり、他のコーラス・グループのようにロマンティックに歌い上げるというより、もっと深い静寂のなかで悲しみを感じさせる佇まい。この時代の他と較べてもかなりインパクトあります。つまり、黒くない。そしてカントリーというより、完全にフォーク。
あと、本によるとビートルズの「愛こそすべて」にこの曲の一部が使われているということですが、ほとんど分かりません。最初のAメロのところを調子変えて早くしたってことでしょうか。



089 Brenda Lee / "I Want To Be Wanted" (1960)

090 Brenda Lee / "I'm Sorry" (1960)

091 Brenda Lee / "All Alone Am I" (1962)


この人は日本じゃそれほど有名な歌手ではないです(コニー・フランシスなどと較べた場合)。でも、あっちでは違っていまして、ビルボードで60年代最高の女性シンガーに選ばれたのは彼女なのです(ジャニスじゃないのです)。それもそのはず、ヒット曲の数がとにかく尋常じゃなく、仕方ないので上に全米1位になったものだけ挙げることにしました。
子役出身で天才少女と言われてたらしく、ロカビリー時代には少女版ロックンローラーとして活躍(12,3歳の頃、笑)していましたが、60年に一気にシンガーへと脱却。特に稀代の名曲090で頂点に。といっても、この時でまだ15歳!(ということは、2005年現在まだ還暦ってことですな)。甘い声をしたガールポップなのに、スタンダードも歌いこなすジャジーでソウルフルなヴォーカルでビルボードの評価にも納得。凄いです、天才っていつでもいるんだな。さらに後にはナッシュビルへ行きカントリーのスターにもなります。
素晴らしいシンガーの場合、曲を聞いたり、リズムに合わせるのに留まらず、その人の歌声に耳を澄ませることが多くなります。これって昔では曲の聞き方として当たり前だったはずなのに、最近は少ない気がします。
まあ、彼女こそドリス・デイローズマリー・クルーニーに続く(白人の)大歌手でしょう。


092 Johnny Tillotson / "Poetry In Motion" (1960)


ティーンアイドル、ジョニー・ティロットソンの代表曲。カントリー・ポップスを中心にした彼の甘い声や、軽快でメロウで少し切ないって意味では、この曲はこの頃のポップソングを象徴しているかもしれません。
ただ、個人的にはタイトルが大好きで。なんでも作曲した二人のソングライターが外を見ると、女子生徒たちが下校中だったそうです。そんな何気ない光景に見たもの、誰でも体験するような単純な想い、それがモーションのなかの詩として、こんなポップソングに変わってします。やはり音楽って魔法みたいなものです。




093 Roy Orbison / "Only The Lonely" (1960)

094 Roy Orbison / "Running Scared" (1961)

095 Roy Orbison / "Crying" (1961)

096 Roy Orbison / "Oh, Pretty Woman" (1964)


094は、知らない人はちょっと変だろうって位に超有名。この1曲だけでも永遠に名前が残るロイ・オービソン。でも、この人が偉大なるロックンロール・パイオニアの一人だってことは意外と知られてない。
彼の最初のヒット作091から問答無用の094まで全部大ヒット。他にもこの時期だけで21曲がヒット。で、それは091を聞けば理由は明白。しっかりしたリズムでロックンロールとしても一流な上に、すべて彼の作曲によるメロディアスな超名曲の嵐。そして、史上最高と言っていいような流れるように伸びのあるヴェルヴェット・ボイス。ここまでセクシーで美しい声を持ったロックンローラーはこの後も一人もいないでしょう。ため息が出る、歌声に酔うしかないです。僕は、彼ほど生で聞いてみたいと思う人はいない。で、この歌唱法は単にロックンロールだけから来てるのではなく、カントリーやテックス・メックスを彼なりに解釈して編み出したものなのです。単に巧く歌えばいいってもんじゃないのです。これぞ、ヴォーカリスト
しかし、トラヴェリング・ウィルベリーズのメンバー(他はジョージ・ハリスントム・ペティ、ジェフ・リン、ボブ・ディラン)になってすぐに病死。。余談ながら、彼の死を受けて加入したデル・シャノンもまもなく自殺。。
そういえば、プリティ・ウーマンのモデルは彼の奥さんであるクローデット。エヴァリー・ブラザーズにも彼女のことを歌ったヒット曲があります。しかし、この094大ヒットの2年後に彼女は事故死してしまう。そして彼の音楽活動もそれ以降、事実上ストップ。悲しみを抱えた人でもありました。

097 Del Shannon / "Runaway" (1960)

098 Del Shannon / "Hats Off To Larry" (1961)


トラヴェリング・ウィルベリーズ加入後に自殺してしまったデル・シャノン。その死の真相はともかく、彼がこの時期に残した曲は凄い。癖になって一度聞き始めると止まらなくなる。
その理由は、まず彼の書いたメロディがただポップなだけじゃなく、凄くよく練られていること。特にマイナーコードの使い方が抜群に巧い。切なさを漂わせながら、感傷的にならない。そしてアレンジも素晴らしく斬新で、ピアノやオルガン、ミュージトロンなんかの使い方が凄い。そして、歌唱も実に凄い。基本はテナーと低音ながら、サイレンみたいなファルセットをメロディに合わせて巧妙に使う。ハード・ロックでよく使うファルセットはこの人が元祖。つまり、紛れもない天才です。なのに、どうも今じゃ評価が低い(というか無視されてる)。なんだろう、アイドルでもあったことが彼への評価を不当に低くしてるんだろうか。
文句無しに有名な095なんかはそれが絶妙に出た超名曲(こればっかですが実際にそうなんだから仕方ない)。096は、僕には九ちゃんのカバーとの出会いがあったので、オリジナルへの思い入れも半端ない。あ、そういえば、面白いのはこの人の曲の邦題で、なぜかどれにも「街角」が入る。095は「悲しき街角」、096は「花咲く街角」。他にも、「さらば街角」「街角のプレイガール」「さすらいの街角」などやたらめったら多い。通称「街角男」と呼ばれたのが当然か。ただ、原題とは関係ないです。
あと、忘れちゃいけないのが、ビートルズ、特にレノン=マッカートニーの名前を全米チャートに最初に登場させたのは彼。ビートルズ上陸前にカバーして紹介してたんですね。ビート時代にもイギリスで人気絶大だったのも当然。日本ではシャネルズがカバーを多くしてたそうです。