ポップス奥の細道 〜七日目

ロックンロールが誕生して3年で、楽器が歌う時代が始まりました。この流れは、後にサーフィンと結びつくことで、ビーチボーイズを生み出し、日本にもヴェンチャーズを通して絶大な影響を与えることになります。しかし、当初のそれは甘いものではありませんでした。

042 The Champs / "Tequila" (1958)


メンバーがある日テキーラを飲んでたところ、誰かから酒に関する曲書けよと言われて生まれたというこの曲。デビュー曲にして全米1位。それどころか、聞けばみんな知ってるんじゃないのという、このサックスのフレーズ。
サックスが中心というのがいかにも時代のつながりを感じます。そういうバーだったんだろうと思う。そして、こんな雰囲気からインスト・ロックは誕生するのです。人の代わりに楽器が歌う。「テキーラ!」しか声ないです。つまり、これってダンスのBGM。10分で録音したそうですが。
全体的にノリはラテン(タイトルがテキーラなんだから当然かも)。この年にリッチー・ヴァレンスがスターになることを考えると、この辺も面白い。


043 Duane Eddy / "Rebel Rouser" (1958)


歌わないティーン・アイドル、ギタリストのデュアン・エディの必殺の代表曲。全米6位というのも凄いけど、その後もシングル20曲がヒットを連発。
そして、これは、もータイトルから言って最高。直訳すれば「反逆の覚醒者」。ぶーんと唸るから「トワンギー・ギター」と呼ばれるセミアコのアームを使った低音が地の底から響いてくると、それを掻き立てるようにサックスとドラムがラテンっぽいリズムを刻んでいく。リンク・レイの「ランブル」と並んで、ギターが感情を煽動する時代の到来です。
デュアンって顔もジェームズ・ディーンに似てるし、もしかしたら理由のない反抗が蔓延してたのかもしれない。表面ではポップな幸福感や高揚感に包まれているのに、眠っている牙が世界中でうずいていたような、それを呼び覚ますようなギター。
これを聞いてると、プレスリーの反逆性もまだまだ幸せなものの上に拡がっていたようにも聞こえます。まだまだ眠ってるものはあるだろ?って問いかけてくるようなこの音。さらに時代は先へと動き始める。


044 Link Wray & The Wray Man / "Rumble" (1958)


そしてリンク・レイのランブル!
インストで過激なメッセージなんて一言もないのに、いくつかの州で放送禁止になったという凄い曲。
デュアンの「レベル・ラウザー」にはラテンのビートがあるのに対し、こっちは静かにかつ過激に過剰に暴動を誘うようなゆったりとしたビート。時には燃えるようにかき鳴らし、時には焦がすように迫る。炎のギタリストっていたんだ、と思う。この人は風を受け止め、逆境に立つ孤高のギタリスト。パワーコードの発明者なり。あ、皮ジャンとバイクが不良のトレードマークになるのも、この人が元祖です。
出身がネイティブ系の血を受け継ぐからか、大地に根ざしたような、時の流れとは無関係なような存在感があります。これぞ、元祖ヘヴィメタ、最強のライオット・ソング。
そしてこの人、76歳にしていまだ現役。でもって、いまだサングラスに皮ジャン。アマゾンで視聴したらギターは完全にメタルでした。かっこよすぎ。