ポップス奥の細道 〜六日目

この頃が、けしてロックンロール一辺倒ではなかったのはサム・クックの登場で分かります。そして、ドゥワップに代表されるポップなR&Bの感覚が色んな要素と混じって感情を歌い上げる。奇跡のような60年代が特別なのじゃなく、いつだって続いているものはある。

036 Sam Cooke / "You Send Me" (1957)

037 Sam Cooke / "Chain Gang" (1960)

038 Sam Cooke / "Wonderful World" (1960)


サム・クックレイ・チャールズと並んで狭い意味でのソウルを生み出した人。聖歌隊で身に付けたゴスペルの感覚とポップなものを結びつけて、こんな幸せで温かい音を作り出す。
でも、ライブではほとんどロックンロール。もちろん、そんなつまらない説明には当てはまらないくらいの名曲を残してくれました。バラード、メロウなグルーヴ、そして声。
僕は時々、ある曲を聞いている時に、あれもあればなぁなんて思ってしまうことがあります。でも、彼の歌を聞いている時にそんな感覚はないです。なぜって、全部が入ってるから。温かいものだけじゃなく、本物の強さもくれる。ソウルの凄さを本当に感じる。強さって、本当は優しくてしなやかなものなんだよね。
64年に彼が殺された時、何かがなくなったのかもしれない。でも、彼が九ちゃんに与えた影響力、それも、単なる歌唱法の真似に留まらないフィーリングを教えたことが凄い。それを感じ取った九ちゃんも凄い。本物のソウルを持った人には、ちゃんと受け継がれていくものなんだなって心から感じた。


039 The Diamonds / "Little Darlin'" (1957)


白人コーラスグループの走りのようなカナダ出身のダイヤモンズ。
オリジナルはR&Bで、それをドゥワップスタイルにしてカバー。軽快なダンス・ビートで聞いてるだけで幸せ感いっぱい。楽しい。
白とか黒とか無関係、自由に音楽を楽しむ感覚をストレートに感じます。
もちろん、黒人の曲が白人に搾取されてるっていう問題もあったのでしょうが、でも、そうやって音楽って沁みこんでいくものなんでしょう。音楽の前に政治も経済も壁が壊れていくのかもしれない。


040 Chuck Willis / "C.C.Rider" (1957)


R&B、ブルーズの古典的なスターで、キング・オブ・ストロールの異名を取ったチャック・ウィリス。ジャケット見ても、なぜかいつも中近東風の頭巾被ってます。この辺りの理由は不明。
彼はこの翌年に癌のために30歳で亡くなってしまうのですが(そのため残されたレコードはたった一枚)、この曲はプレスリーやアニマルズもカバーしたりと、堂々たる古典。どうもロック系の人に愛されるみたい。
サム・クックに通じる温かい世界。この曲はイントロがクセになります。キューピー3分間クッキングのテーマソングは、これがオリジナルかも。でも、全体的にはかざりっけなしの歌勝負。ストロールの意味通りにふらふらっとしてるようで、足取りはしっかりしてる。なので、こっちも堂々と受け止めて聞くべし。


041 Danny & The Juniors / "At The Hop" (1958)


ここから58年。
テレビ番組からヒットした最初の曲。「ツイストの帝王」チャビー・チェッカーがカバーするのも当然の、軽快にしたツイスト調のスーパーダンスソング。高速にしたドゥワップともいえる。邦題「踊りにいこうよ」そのまんま。これ聞いて踊る気にならない人がいるなら、たぶんちょっと変です。
映画「アメリカン・グラフィティ」でも効果的に使われてます。つまり、時代を象徴するようなそういう曲。60年代のダンス・ブームを呼び込むきっかけになった曲でもあるらしい。
それにしても、ジャケットで踊る4人の姿もすごい楽しそうです。