装苑 12月号

julien2004-10-30

毎号毎号、感じさせる部分が多くて好きな雑誌ですが、今号は特に素晴らしいです。特集で30年代から80年代のモードの流れが手軽に俯瞰できます。細かい部分の把握は無理ですけど、視覚的に楽しむには充分。
ファッション誌というと流行のモードを伝えるだけのものになりがちですが、そこはさすがに装苑。そもそもがファッションを学んでいる人向けの雑誌だけはあって、普段からの姿勢が違うんですね。こんな企画は他誌には無理でしょう。それもマニアックにならないラインをちゃんと守っていて、けしてアングラにならないところがいいんです。
個人的に好きなのは、冬に上映されるシルヴィア・プラスを主役にした映画のところ。50年代のアメリカと言えば、やはりサリンジャーと、そしてシルヴィア。無意識と意識のせめぎ合いのなかで生まれる彼女の詩は本当に素晴らしいのですが、その映画からモードを切り抜いてくるというのも装苑らしくて綺麗です。

個人的にモード(ファッション)とは、知性と感性と美意識が重なるところに生まれる表現そのものなのですが、それ以上に時代に謙虚なところが素晴らしい。だから、それは時代の美意識だけでなく、醜さをも映し出してしまう。そこが儚いながらも、強くて美しい。例えば、グレタ・ガルボチャップリンベーブルースルイ・アームストロングに象徴される狂乱の2,30年代のモードなどにはため息が出てしまう。フィッツジェラルドが描き出した偽善と退廃の裏側の人間の脆さや悲しみを、これらの写真を見ていると溢れるくらいに感じてしまう。