France Gall / Poupée de Son (1964-67)


ビートルズ旋風でアメリカにもロックンロール大復活の頃、フランスでも旧態然としたシャンソン支配の情勢に変化が起きていたりします。
それは”イエイエ”と呼ばれたブームで、要するにフランス版のロックンロ−ルのことです。まあ、これが本当にロックンロールだったのかには議論を残す余地が充分にありますが。
で、ブリティッシュ・インヴェイジョンでもそうだったように、フランスでもガール・ポップが大流行。
その象徴が、「フランスのギャル」というとんでもない芸名を持った彼女。イエイエ・ガールの典型。今見ても、芸名に負けずにとんでもなく可愛いんですが、実は彼女の父親は有名な作詞家だったりと、意外と業界関係者だったりします。


ちなみに、このブームの背後には、やはりゲンスブールがいるわけです。彼は1stで驚異的に新鮮なシャンソンを歌ったり、すぐにツイストに反応したりと、状況の変化は読んでいたわけですが、イエイエ・ブームを前にして「エレキを抱えた連中が乗り込んできて、もう俺は終わった」って思ってたそうです。でも、決定的だったのが超名曲”夢見るシャンソン人形”を彼女に提供したこと。この1曲で時代は変わった。当時、まだ彼はジェーン・バーキンには出会ってないんですが、すでにロリータ傾向は全開。ベイビー・ポップというか、フレンチ・ポップのイメージの決定付けに彼の傾向がそのまま反映されてるわけです。
ただ、この曲の歌詞を知ってます?これは、アイドルに「私はただのお人形で、恋もしたことないのに恋の歌を歌ってるヌカで出来たお人形」って歌わせてるんですよ(日本語訳にはまったく反映されてませんが)。こういうシニカルな視点を持ったプロデューサーが現在いないのは寂しいです。
ただ、”アニーとボンボン”になると、いたずらが過ぎて笑えない感じもします。「17歳のアニーはキャンディが大好き」っていう歌なんですが、とてつもなく危険な隠喩が秘められていて、ここでこれ以上解説することはできません。彼女自身、意味も分からずに歌って、後で真相を知ってからは人前にしばらく出れなくなったという逸話があります。


フレンチ・ポップは日本でも当時非常に人気があって、ビートルズを聴くのと同時に、みんな聞いていたそうです。聞きながら、そういう時代の雰囲気を感じてみるのもいいですよね。
ちなみに、これは92年編集のベスト盤です。彼女のベストは多数出ていて、結構収録曲に違いがあるのですが(当時発売された日本語ヴァージョンが収録されてるものも!)、ゲンスブール提供の曲が全て収録されているこの盤は入手しやすいし、お薦めです。これぞ完全無欠のガール・ポップ。無敵。