ポップ・ミュージック

Snoozerのディスクガイドはようやく発売。必須&必携。読めば分かります。。
では、無責任なので、僕が気に入った理由を下に書きます。でも、これは初心者向きではないかもしれません。
なぜならここには秩序はないし、読者をロスト・イン・トランスレーションにするかもしれませんから。

この本は、スヌが選んだ去年のベスト50を軸に、(気分的な)関連で他のCDが紹介されていく形式です。
僕が思うに、関連性に必然性はありません。去年のCD自体が、あくまでスヌの好みのものなので、前提自体に主観的なものが大幅に含まれています。
そのため、整理された知識や、体系的な音楽観を求める方にはまったくと言っていいほど役に立ちません。

でも、僕はこうしたカオスにリスナーを叩き込むのもいいんじゃないのかと思いました。
勿論、これを作っている人には、きちんと整理された知識があるわけですから、それをまとめたガイド本の制作も可能だったでしょう。
でも、タナソウはそうした知識を教えること自体を避けた気がします。
「俺が好きなのはこれ。でもって、連想したのはこれ」
結局、この本はそれだけです。でも、そこから音楽との関わりや、間違いなく優れたリスナーである彼の感性を感覚的に掴んだり、他のことを考えながら自分の感性を磨くというガイド本もありなのかなと思ったんですよ。読みながら自分の感性を考えていく本、といった感じでしょうか。

まあ、褒めすぎかもしれませんが。



ただ、このカオスには、それなりの理由もあるんじゃないかな、って思った理由がもう一つあります。
それは、最近のタナソウの文章を見ると、特に「ポップ・ミュージック」という言葉が目立つように感じます。
けれど、それは単に耳に響きがよい音楽を示すような、従来の使い方とは違うようなのです。
つまり、あの人は、このワードをあらゆるミュージック、ソウルフルで最高のミュージックを語る際に用いているように思うのです。
つまり、本当の意味でのポピュラリティなミュージック。
そしてこれは、あらゆる音楽のカテゴリーを壊す力がある言葉だと思う。
ロック、ブラック、エレクトロニカ。こんな分け方は、リスナーには関係ない。
僕らはただ最高の音楽が好きなだけなんだから。
ビートルズリッチー・ホウティン、そのどちらとも好きだっていいわけだ。アズテック・カメラがヴァン・ヘイレンをカバーしたりするのだし、サンプリングに元のジャンルは関係ない。

そういえば、ずいぶん昔にトム・ヨークが「ポップ・イズ・デッド」なんて言ってました。でも、リスナーは死んだりしないのだから、これはポップ・ミュージックが資本のものだったことを示していたりする。
確かに音楽業界は縮小傾向にあるし、それは音楽自体の縮小へと繋がっていくかもしれない。音楽は細分化する一方だ。
けれど、柔軟な耳と感性と、政治感覚と歴史感覚を持ったリスナーの手によって、あらゆる音楽が「ポップ・ミュージック」として再構成されれば、それは今までとはまったく異なった新たな動きへと繋がるかもしれない。マルチチュードとは、そういう可能性を指し示す言葉なのかもしれない。


実は、そういう狙いもあるんじゃないかと思うんです。受け身ではなく、より積極的なリスナーのための本。
未来のポップ・ミュージック・ラヴァーズ育成のための本なんではないのか、とも思ったのです。

おわり

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つづき

つまり、この本だけではダメってことで、これから色々CDを買いたい人には他の社のガイド本をメインにするのをお勧めします。
ロックは、50年代から現在までの約50年間分、ブルーズもソウルもヒップホップもテクノも、名盤ならばなんでも「ロック」になってたりするので、とにかく異常に(紹介される)レコードの数が多いんです。だから、自力や友人からの情報だけではとてもフォローできません。
まあ「全部聞きたい」とかいう気合の入った人がどれほどいるのか知らないんですが、やっぱりガイド本は必要なのでは・・と思います。
というか、僕自身も10冊以上は持っていて、それでもけしてガイド本マニアでもないので漏れまくりです(ガイド本には編集者の趣向がかなり反映しますので)。
僕は一応1000枚以上持ってますが、それでもコレクターでは全然なく、単に好きな音楽を手元に置いておきたい、DJの際に必要、とかその程度なんですが、まだまだですから。ブラックやテクノは専門じゃないので数は多くありませんが、今後増える可能性は大です。さらに、経済的な事情で、結構レンタルは活用しています。PCに入れれば同じなので。

まあ、これでも普通の感覚で見れば、充分にマニアなんでしょうけどね。
ただ僕のベースはクラシックなので、そっちのマニアをよく知っていますが、比べれば可愛いものだと思います。なにせ、そっちのマニアは「運命」だけで2,30枚は平気で持ってますから。その中でも、フルヴェンが振ったものだけで2,3枚とか。