Roxy Music / Roxy Music (1972)


おそらく80年代頃のことでしょうか、散らかしっぱなしになってた玩具を箱に整理していた時、”グラムロック”という箱に間違えて入れられてしまったのがロキシー・ミュージック。確かに二人のブライアン(フェリー&イーノ)もブっ飛んだ服装をしてますが、どう聞いたってこれがグラムのわけがない。見た目がそれっぽいだけ。
それにしても凄い時代にデビューしてますよ。ロック黄金時代という名は嘘の衰退の時代、パンク前夜の時代、ハードロックの傍らでグラムとプログレが暴れまわる時代に、まさにその二つの要素を表面的に合わせながら、それをポップ・アートとして表現してしまうこのセンス。しかし、それがセンスが良いわけでもなんでもなくて、ジャケットの”セクシー女性”(死語)シリーズの意味も、どこかベタでネチネチしてて、ネオンサインのように安っぽく儚い。それは、まるでブライアン・フェリーの歌唱そのまま。彼は二枚目というより明らかに三枚目。イーノのキーボードも何がやりたいのかさっぱり分からないし、音も服装ほど派手なわけでもない(彼は2nd後に脱退。ミニマルのスティーブ・ライヒに接近したりして、その後のポストパンク、テクノ時代を予測しているような行動を取る)。むしろ、他のメンバーのサックスなどのほうがよほど良い。これでなんで、こんなにバランス良くまとまっているんだろうか。
さらに言えば、このミクスチャー・サウンドがほとんどパンクとさえ化しているところなんかも恐ろしい。勿論、これは計算の上であって、同時期のモダン・ラヴァーズなどとはまったく別の意味でパンクなんです。つまり、ポップ・アートをやってるんですよ。ヴェルヴェッツよりもよほど正しく。
で、ウォーホルのファクトリーがあったNYからパンクが産まれる理由は、実はこの辺にあるんじゃないかと思うんですね。勿論、ロキシーはNYのバンドじゃないけれど、記号化を極限まで意識してサウンド、ビジュアルを作るブライアンのスタイルは、この1stのオープニング"Re-Make,Re-Model"で明確に主張されてます。これはデリダ脱構築ですよ。
実際に、ロキシーから影響を受けたパンクバンドなんて聞いたこともないし、音的な影響も皆無。しかし、パンクがその後、ポスト・パンクニューウェイブへと進化するのが必然だったのだとしたら、そこにトーキング・ヘッズの影が見えてくる。ピストルズの着ぐるみを着たPILも。
パンクっていうのは、電柱を素手でガシガシ殴るだけじゃないんですよ。