Sarah Mclachlan / Surfacing (1997)

julien2004-04-29


昨日に続いてリリス・フェア系の人。というか、この人がこのイベントの主催者でしたが、99年にこれを終了させ、母親の死、出産を経て、つい最近、久しぶりにアルバムを出しました。
リリスという名前通りの神秘的な雰囲気を持った女性で、名前からはアイリッシュなんだろうと思わせますが、意外と経歴は古くデビューは88年。ただ、この作品こそが出世作で、私が彼女を知ったのもこれがきっかけでした。ちょうどニューヨークにいた頃で、MTVでこのアルバム収録の"Adia"がトップ3入りを果たし、あまりにも美しいメロディとサウンドにたちまち虜になって、すぐに近所のタワレコに買いに行ったのを覚えています。一緒にPatti Smithをリマスターで揃え、ついでにニューヨーク・パンクの写真集も買って・・。その後、西部に家族で旅行し、グランドキャニオンやサンタフェにも行きましたが、その旅行中も聴いていたのはこのアルバム。だから、いろんな景色とこのアルバムの音は結びついているんです。向こうの家もホテルも、日本と違って基本的に蛍光灯がないので、夜はほの暗いんです。そんな夜と彼女の声はいつも溶け合って、私のなかでも佇んでいます。
本当に素晴らしい"Adia"が象徴しているように、彼女の曲は繊細で叙情性溢れるメロディと、透明で儚さと強さを併せもった声、プロダクションによって音響の強められたサウンドアレンジなどで、どこか人工的な神秘性を醸し出しています。社会や心の闇を静かに見つめた歌詞のおかげで、それが単なる懐古主義にならないところが、本当に魅力的。。。夜になれば闇は自然に訪れ、朝になれば自然に光が溢れ始めるように、ここでは光と闇が優しく溶け合って、たたずんでいるんです。最後の"Last Dance"がうすもやの中に消えていくように終わる時、私のなかでも何かが終わり、始まっていくような気持ちになれるんです。

  • Favorite Tracks

: M1: Building a Mystery , M3: Sweet Surrender , M4: Adia , M5: Do What You Have to Do
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