The Stone Roses / The Stone Roses (1989)


再結成してくれるんじゃないのかな、という想いを断ち切れない人の数でなら、このバンドを超えるものはないでしょうね。
何度聞いても、これがデビュー作だというのが信じられないほどの完成度だし、でも、同時に新人以外には絶対に作れないものだとも思わせる。これは、もう奇蹟ですね。
このアルバムに対しては、欠点を挙げていったほうが早いんじゃないかと思うけれど、それを見つけるのがとても大変だったりもする。果たしてそんなものが、あるんでしょうか。
カテゴリーでは「マンチェスター」に入るんだろうけど、ギターポップとでも呼べそうなくらいにポップでメロディアスな曲ばかり。なのに、ものすごくグルーヴィー。パンクでもあるし、ニューウェイブでもある。ダンスなのに、紛れもなくロック。
時々、こういうとんでもない作品が生まれるというのは、単に天才の登場がそんなに度々あるものじゃないという確立論的なものなのかもしれないけれど、そういうつまらないことを考えている必要はないですね。彼らの登場で歴史が変わったのは、単なる結果にすぎません。


本当に優れたバンドというのは、メンバー全員がよく知られていることが条件だったりします。人気が出たから知られるということもあるけれど、やはり一人一人が自己主張できるだけの実力を持ち、さらにバンドが単なる寄せ集めに終わらないで、その融合によって爆発が生じる。そういう魔法はロックにしかありえないことです。バック演奏なんていうのは、ロックではナンセンスなんです、本当は。
このバンドの主役はメンバー全員で、誰が欠けてもこの魔法は生まれなかった。
イアン・ブラウンジョン・スクワイアマニ、レニという古くからの友達4人は、やがてバンドを必要としない関係になり、レニの脱退で解散してしまう。
メンバーそれぞれは今でも活躍してますが、でも、どこか本当の自分を取り戻せないでいるように感じるのは、私がローゼズを特別視しすぎているからでしょうか。

私は最近のロックの盛り上がりに喜びつつも、どこか冷めた感じはなくせません。単なるルネサンスには終わってほしくないし、パンクからニューウェイブを経て、ローファイに至るまでの伝統が忘れさられていくのは悲しいです。だって、最高のハートを持った連中がたくさんいて、今でもレコードを回せば、すぐに伝わってくるくらいに、熱いものが溢れてる。でも、それは知られなかったり、忘れられていったりする。そういうものは与えられるものじゃなくて、自分で探すものなんだよ。
過去の音が、こんなにリアルに響くってことが、自分の世界を拡げてくれる。ハートをもっと熱くしてくれる。こんなに素晴らしい世界が、どこにあるっていうんだろう。刹那的なことに慣れすぎたくはないよ。


クラブ行って耳にするのは打ち込みばかり。私は本物のビートが聞きたいのに。ハウスやテクノは家じゃ聞きたくない。クラブで聞ければ十分じゃね?って思う。家で聞いてても、一人でに踊りだしたくなるようなレアなビートが欲しい。終わってしまった魔法でも、その効き目は永遠に死なないから。このアルバムを聞いていると、そんなことばかり思えてくる。
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