SweetS / SweetS (2004)


で、明日の自主ゼミの準備をしなきゃならんのに逃避です。
これは友人のオススメなんですが、ゲンスブールの後だし、ある意味タイミングはいいかもしれない。めちゃくちゃ売れてるのを紹介するよりも楽しいし、自分自身アルバムとアルバムの繋ぎに聞いたりしてます。

まず、アメリカで売れまくりのアイドルを考えてみます。例えば、Britney SpearsAvril LavigneJessica SimpsonHilary Duff。で、日本のモーニング娘。松浦亜弥上戸彩を横に並べて比較してみる。どうして、こんなに違うのかというくらいに違う。一言で言えば、日本のアイドルは子供っぽい。簡単に言っちゃえば、「大人っぽい高校生」を求めるのが海外で、「高校生っぽい高校生」を求めるのが日本というか。こんな簡単にまとめることはできないけど、そうした傾向はあると思います。


まあ、私が聞いたのはモー娘よりもフランス・ギャルのほうが先だったから、アイドルに「私は恋のことも知らないで恋の歌を歌うお人形なの」と歌わせるゲンスブールエスプリが強烈すぎて、幻想だと理解した上でアイドルを見てしまうんですが。でも、そういう意味で楽しめればポップミュージックとしては申し分ないんですね。
で、これは直接は関係ないんですが、私には「萌え」というのが、どうにもよく分からない。「可愛い」っていうのは、客観的な判断だし分かるとしても、感情と密接に結びついてるような「萌え」っていうのは、どうも実感ないんです。東浩紀記号論的におたくを解析しているけれど、これは実写のアイドルにも適用できるんでしょうか。私にはできない気がする・・・。


あと、日本のアイドルに関して思うのは、海外に比べるとマルチに活動する人が多いようで、女優出身のヒラリー・ダフはともかく、他は映画、TV,歌手などといった分野ごとにアイドルがいるし、アイドルというより、スターという感じが強くします。つまり、時代を象徴するようなアイドルっていうのは、割と日本独自のものなんじゃないかと思うんです。例えば広末涼子。TV,映画、写真集に歌手、とアイドルというイメージと結びつくことは大抵やってたし、CMを通して「国民的アイドル」のイメージをさらに植えつけていった。それが、大人になるにつれてアイドルといったイメージは薄れていく。一方、松嶋菜々子をアイドルだと思う人は誰もいない。彼女も女優以外の仕事はしない。要するに、アイドルは少女でなければならないわけです。
だから、アイドルを作るのは、実は大衆なのだ、ということはいえると思う。裏返せば、アイドルにはその時代の大衆の求める幻想といったものが投影されているわけです。
となると、日本人は少女幻想を持っているということになる。少なくとも、アイドルに少女性とでもいうべきものを投影しているとはいえそうです。

最近のプロデューサーは、アイドルを売れる商品としてしか扱わないから、ゲンスブールのような冷めた感覚は持てないのでしょうが、注意深く見ると、それなりに方向性や狙いは見えたりする。
この子たちは平均年齢12歳。モー娘よりも第2のSpeedって感じはしますが、曲のタイトルには、気になるくらいにある方向を狙ってるのが分かります。可愛く言えば、背伸びする女の子。悪く言えば、ある潜在的欲望を刺激するように振舞う子たち。彼女たちに罪はもちろん無いですけど。

ただ、エイベックスはモータウン・システムを真似してるって渋谷陽一がどっかで喋ってましたが、あれだけ多くのミュージシャンをプロデュースしていくというのは確かに大したものだと思います。作曲、作詞、振り付けなどが部門別になっていて、製品のように分担作業でミュージシャンを生みだしていく。ポップミュージックとして考えれば、クオリティもけして低くない。
で、このグループに関しても、エイベックスはかなり推してるようだし、打ち込み多用の典型的なエイベックスサウンドですが、楽曲自体の質はかなり良い。Queenのリズムを入れた曲もある。第2のSpeedになる可能性は高いでしょう。
でも、特徴はやっぱり声かな。幼さを強烈に感じてしまう。フレンチのように無理矢理作られたウィスパーボイスではなく、少女そのままの声。。。。作品として聞く分にはいいんですが、去年に渋谷で起きたような事件は本当に要らないわけです。
あくまでユーモアならばいいのだけど、変な大衆の幻想が投影されるのだけは止めてほしいかも。子供を性の食い物にするような連中は論外としても、甘い幻想も危険です。歯止めをかけるための実経験を持ってる人なんて、あまりいないでしょうから。
ASIN:B0001AELBI


追記
そういえば、ナボコフの『ロリータ』は、文芸批評からはナボコフ自身の「郷愁の念」といった観点から解釈されるほうが多いようです。まあ、時代的にあの概念をどう扱ってよいのか分からないし、今でも「異常者」のそれみたいにしか扱えないんでしょうけど。
とりあえず、ゲンスブールは奇跡的だと言えるでしょうね。ただ、過去の詩などを読む限り、割と普遍的に見られるものである気はするのです。中国の『紅楼夢』とか『源氏物語』とか。その辺りは社会学的、歴史学的に分析する必要がありそうですが。アナール学派の著作を探せばあるかもしれない。
なんだか、カテゴリをMusicではなくThinkingに変えたほうがいい気がしてきました。