The White Stripes / Elephant (2003)

julien2004-03-08


ストロークスのブレイク以降、各地からロックンロールバンドが次々とメインストリームに出てきたのが2001年。それはシアトルのグランジのように地域的な動きではなく、まるで同時に生み出されたように世界中の各地で起こった。スウェーデンThe HivesオーストラリアThe Vines、ニューヨークのThe Strokes、サンフラシスコBRMC、そしてデトロイトThe White Stripes・・・。田中宗一郎はそれをロックンロール世界同時革命と呼んでいたが、その流れのなかでホワイト・ストライプスも「再発見」されたのだった。
再発見と書いたのは、彼らはこのムーブメントが起きる前にすでにアルバムを2枚発表していたためで、Pavementと一緒にライブをしていたこともあるらしい。だが、もしストロークスがいなかったら彼らはどうなったのだろう、とは思ってしまう。私が彼らの音楽に触れることはなかったかもしれないし、これだけのサウンドが、こっそりと歴史の片隅で埋もれてしまったのかもしれない。こうした神様の悪戯は、音楽では度々起きていることなのかもしれない。でも、そんなことはどうでもいいことだ。

ホワイト・ストライプスは、Meg White (Dr,Vo) と Jack White (Vo,G,P) の姉弟によるユニット。赤と白の服しか着ない謎に満ちた「姉弟」は、ブレイクした頃は「本当に姉弟なのか?」とか、「実は結婚していた」とか、今考えるとどうでもいいことで話題になっていたのを覚えている。PVも実に印象的なものばかりだったし、そんな風に話題が先行していたのは、あの頃の空気が熱かったこととも関係あるんだろう。ただ、サウンドは本物だった。先ほど挙げたグループの多くがガレージパンクだったため、彼らも当初はそう受け取られていた。確かに、それは必ずしも間違いではないけれど、その背景にあるのはパンクではなく、戦前のブルースだということはインタビューを読めば分かることだった。そして、それを正面からぶつけて、彼らがにわかバンドなどではなかったことを証明してみせたのが4作目となるこの作品。
M1「Seven Nation Army」だけでも誰もが納得するだろう。この荒々しさ、攻撃性、憂いに満ちたブルースサウンド。「スウィートハートの死」に捧げられたという今作は、60年代の作品だと言われても納得してしまいそうになる。けれど、その攻撃性が現代をはっきり感じさせる。この時代にしか生み出されえない音楽。アメリカでも最低レベルに治安の悪いデトロイトエミネムの故郷でもあるその薄暗い街の片隅で、失われたものに対する想いをつないだこと、そんなものがたった二人によるシンプルな音で鳴り響く。まるで、時代が彼らを必要としたようにここにある。
グラミー賞まで貰ったのは、アメリカでもロックが変わりつつある兆しなのかもしれない。
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