Television / Marquee Moon (1977)

julien2004-02-19


私のロック好きはパンクをもってその嚆矢とするんですけど、パンクって言っても、なぜかロンドンのではなくて、NYのだったっていうのが、個人的にいちばん惹かれる部分って今も前もそんなに変わってないのかな、と思わせてくれます。
Sex PistolsThe Clashがあまりに有名なので、パンク=ロンドンってイメージは強いんですが、実際には、パンクって言葉はNYの雑誌名から来てます。マンハッタンのバワリーにあるCBGBやマクシズ・カンサス・シティっていうライブハウスに、今までとはちょっと違った音楽活動をしてる人達がいて、それがPatti SmithだったりTelevisionだったり、Ramonesだったりするわけですが、そういう連中を「パンク」って言い方をしたのがすべての始まり。
実は、親の仕事の都合でNYには結構行ったことがあるんですけど、まだ高校生だった私は、バワリー周辺=地元の人間しか行かない場所だったので怖くて行けませんでした。勿論、この時代の話じゃないから、誰もいませんけどね。でも、始まりの場所を見てみたかった。それが本当に残念。

NYパンクは、パティ・スミステレヴィジョンのように文学的で知的なイメージがあって、それが最初に言った個人的に云々の理由だったりもしますけど、ロンドンとまったく無関係かといえばそんなこともなく、Televisionの初代ベーシストだったRichard Hellって人は、パンクって言えばお約束みたいになってるツンツンヘアや安全ピンなんかを発明した偉い人なんです。Sex Pistolsのマネージャーにして仕掛け人マルコム・マクラーレンは、彼を気に入って、ロンドンに連れ帰ってバンドをやらせようとしましたが、彼に断わられて断念。で、ロンドンに帰って、自分の店「Sex」の常連のチンピラを集めて作ったのがPistolsなんだから、笑っちゃいますよね。ちなみにマルコムの彼女だったのが、71年から一緒に店を開いていたVivienne Westwoodなんだから楽しくなってくる。

で、そんなこんなで始まったパンクが、ロックの歴史を変えちゃうんだから、何が起こるか分からないですね。あるのが感性だけっていうのがよく分かります。ぶっちゃけ、みんなやりたいことをやってるだけ、っていうのがかなり明白だと思う。それが、時代の空気と見事すぎるくらいにはまったんですかね。


で、これがTelevisionの1st。
「ミロのヴィーナスの腕に身を投げるのさ」なんて歌詞が示すように、文学的というか気障というか、とてもクールなパンクバンド。いまのパンクとは肌触りが違うかもしれませんね。でも、私にとっては、これがパンクなんです。
ヴェルレーヌから名前を取ったというTom Verlaineと、マシュー・スウィートのギタリストもやってるRichard Lloydの掛け合いギターがやたら官能的。ベースは元MC5のFred Smith。この後、Patthi Smithのご主人にもなります(亡くなりましたが・・・)。
グループ名の由来もクールで、トム・ヴァーラインのT.Vでもあるんですけど、「アメリカのどの家庭にもあるものだろ、テレヴィジョンは。でしゃばりな機械だけれど、時代にとても謙虚だ」。

2ndは、緊張感の和らいだ抒情的なサウンド。そちらもすごくいいんですが、その後を期待されたのにその2枚で結局解散。90年代に再結成してますが、そっちははっきり言って聞く価値ないです。。。時代に謙虚なんだよね、要するに。この音は、やっぱり時代のなせる業なのかなぁ。。
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