陶酔するもの

The Best of the Animals

0001 The Animals "House Of The Rising Sun" (1964)

ブリティッシュ・インヴェイジョン勢の一翼を担ったアニマルズの代表曲、というより、一般的にはほとんどこれ一発のバンドとさえ思われているのでは。この曲はカバーでオリジナルは伝統的な民謡、日本で言えば津軽じょんがら節をロックでアレンジするようなもの。
邦題「朝日のあたる家」、ただし印象は朝日というより夕日を感じるのは何故だろう。
イントロのインパクトだけで永遠、そのギターリフが執拗に繰り返され、「最高のヴォーカリスト」(by ブライアン・ジョーンズ)のエリック・バードンのブルージーなややもったりとした声が被されば、問答無用に強烈。ですが、ビートルズストーンズとは全く異なる個性、1964年以前のどの曲とも異なる印象、その後のバンドでこれに近いのは、攻撃性のなくなったブリティッシュ・フォークか。霧のかかった森の奥から聞こえてくる衝動、民謡の枠を超えて、当時どんな風に響いたのか。現実は全米1位のメガヒット。
最初にこの曲を聴いた印象は、ずいぶん穏やかなメロディだと思った。ブリティッシュ・ビートのあのノリは皆無、同列に並べて語られるどのグループとも違う。しかし、これこそ当時のバンドたちが憧れたR&Bの世界であって、この歌唱、この静かな攻撃性と野蛮性、それが魔法のように宗教のように若者を支配し、洗脳したロックンロール。呪縛から離れれば、もっと世界は自由になる、僕らの過去にあったものに色を付けるのは、憧れであり、夢であり、陶酔であって、ここに拡がる砕かれ甦る民謡を聴くことで感じられるものはいくらでもある。ここでは何も否定などされてはいない。