ポップス奥の細道 〜二十日目

109 Chubby Checker / "The Twist" (1960)


110のハンク・バラードが作曲した曲を、この男が歌ったら時代を作ってしまったという。これは、そんまんま名前通りに「ツイスト」。これこそ今に至るダンス・ミュージックの典型的な基本形で原型なり、といいたいところが、実はそっくりな曲がこの以前にありまして、随分前に紹介したダニー&ザ・ジュニアズの「At The Hop」。進行そのまんまです。が、そこはツイストの帝王チャビー・チェッカー。黒人ならではのシャウトがビートを強烈にする。とにかく声が太い、重い。
いまでも通用間違い無しの鬼のようなダンス・ソングで、バカみたいにテンション上がるわ、腰に来るわ。60年代最大のダンス・ムーヴメントはこの曲で始まったというのも当然か。


110 Hank Ballard & The Midnighters / "Finger Poppin' Time" (1960)


この人の代表曲も109と同じ「ツイスト」。作曲者ですからね。でも、あえて外してこっち。
だけど不思議なことにこれはツイストじゃないです。コースターズのようなロックンロールR&B。当時のクラブ(ダンスホール?)の雰囲気が伝わってくれるようなわくわく感。これから始まる炎の60年代や先の70年代を予感させてくれる。
僕はこの先の音楽も知っているし、ヒップホップが退潮している時代にさえいるのに、この楽しさはなんだろう。つまりは、歴史のように俯瞰しながら音楽聴く必要なんてないってことだろうか。
歴史は大切。知っていれば、それだけ深くものが見える。知識も学問もツールとして使えば、こんなに素晴らしいものはない。「ただ楽しければいい」っていうのだって間違ってはいないけれど、それだけじゃ見えないものはいっぱいある。
大事なのは、それを気にしないこと。吸収したものや感じたものは、忘れずに自分の一部になる。だから、たくさんのものを感じられる。
この曲が古いっていうのは、単に何十年も前に生まれたっていうそれだけのことで、聴いているこの瞬間は間違いなく今なのだ。
そしてその今は遥か昔とも、自分が過ごしてきた時間とも繋がっている。そんな流れのなかでこの曲は流れる。

111 Gary "U.S." Bonds / "New Orleans" (1960)