ポップス奥の細道 〜四日目

023 Frankie Lymon & The Teenagers / "Why Do Fools Fall In Love" (1956)


嵐のような56年の曲もこれでおしまい。
邦題「恋は曲者」。自由なタイトルの付け方がいいです。これはドゥワップの弾けそうにポップなダンスミュージック。
マイケル・ジャクソンの元祖みたいなフランキー・ライモンは当時13歳。史上最初の黒人ティーンエイジャーのスターです。ダイアナ・ロスのアイドル。その彼女はソロでこの曲を歌ってます。
マイケルとも対等に立てそうな抜群のヴォーカル。天才が消費され始める時代の始まりかもしれません。これだけの曲を残した彼は、12年後、70年代を見ることもなくオーヴァードーズで死亡。



024 Pat Boone / "Love Letters In The Sand" (1957)


邦題「砂に書いたラヴ・レター」。ティーニー・ボッピーと呼ばれる白人ポップ・スター時代の訪れを告げる超名曲。これを聞いて闘志を与えられるなんてことは皆無ですが、確かに素晴らしい曲。
彼のルックスが良い、歌が巧いというのがスターになった理由なのは勿論でしょうが、それ以上にエルヴィスのアンチテーゼとして売れてたことが大きい。エルヴィスへの大人たちのひそみが強くなればなるほど彼は売れる。ある意味、時代に乗ったスター。
リズムはドゥワップ、でもそれ以上にトラッドなポップス。
そして、エルヴィスを彼と聞きくらべると、色々見えてくる。どちらもベースは黒いはずなのに、パットには真っ白さしか感じない。そして、パット・ブーンが漂わせる雰囲気のほうが実は絶滅状態なんですよね。パット・ブーンが好きなんです、なんていうアーティストは聞いたことない。でも逆に、ここから汲み取れるものもあるように感じる。
形式的とはいえ、アメリカの保守性のいいとこだってあると思うのですが。折り目正しい綺麗な曲です。
優しく愛せよ、冷たくすんなよ、とエルヴィスが言ってる横で、パットは砂浜にラブレター書いてるんですから。謙虚でスマートで親御さんも安心だ。


025 Paul Anka / "Diana" (1957)

026 Paul Anka / "Lonely Boy" (1959)


パットやニール・セダカ、リック・ネルソンと並ぶエルヴィス対抗グループの一員、、というか時代を代表するスーパースターですが、僕はこの人については凄い好きですね。
まずメロディ・センス抜群。ニール・セダカほどにソングライターを仕事にしてたわけじゃないですが、あのシナトラの「マイ・ウェイ」って彼の曲です(正しくはアレンジャー)。そして、この絶対的な代表曲ももちろん自身の作品。
実在の女性を歌った最初のヒット曲とは前にも書きましたが、このテンション最高です。かっこつけも、姑息さも、意気地なさも微塵もなし。大好きだよ、最高だよ、僕の夢だ、ダイアナ、と歌う歌う。
それに加えて顔も物凄く良い。リック・ネルソンと彼がこの時代の最強色男でしょう。やはりスターはルックス。
彼はいまだにスターとして活躍してますが、やはり才能と、この直球さがあるからか。帝王ですね。


027 Tab Hunter / "Young Love" (1957)


この人は歌手じゃないです。当時の人気俳優だったそうです。でも、この曲のために逆に名前が残ったというよくある現象。なんでも、レコード会社の方針でわざと歌手でない彼に歌わせたらしい。つまり、素人っぽさを強調したかったのでしょうが、恐るべき先見性。
なぜって、そういう曲だからです。このポップなメロディを強調するには、歌が巧くないほうがいい。
それくらいメロディが残ります。カントリー・バラードですが、ほどよい黒さもあって、でも派手なアレンジ一切なし。背後のハモ声も実にチープでいい。タブ自身、歌が巧いわけでもない。でも、今でも誰かがカバーすれば売れるだろうメロディ。
私が最初に聞いたのはレスリー・ゴーアのカバーでしたが、そっちはさすがのアレンジ。でも、オリジナルのほうがよく聞こえるのは、これには派手さがいらないからか。