The Crystals / The Best Of The Crystals (1961-64)


Styles : Girl Group , Wall Of Sound , Brill Building Pop
フィル・スペクターがプロデュースしても、ロネッツ(というより"Be My Baby")が有名すぎて、相対的に地味なクリスタルズ。
クリスタルズはいわばスペクターの実験作品だったようで、このベストのジャケを見てもヴォーカルが3人、特にダーレン・ラブ(この人、今は女優だったりしますが)が歌ってそれがヒット曲だったりするのだから、誰がメインだったかとか、たぶんあまり関係がないグループ。
で、当然ロネッツでのノド鳴らしまくりのヴェロニカみたいな個性は無い。でも、これが名曲の嵐だったりで、とにかく最高。ありとあらゆる感情がつまった万華鏡のよう。作曲家陣も、キャロル・キングとジェリー・ゴフィン、バリー・マンとシンシア・ワイル、ジェフ・バリーにエリー・グリニッチ、ジーン・ピットニーまでいて、当時のポップスの全体像まで見えてきそう。
そして、何よりもスペクターがどんな過程でああいう音へと至ったのかが、これを聴くと物凄く感じられる。ドゥワップからロックンロールまで、音の果てへ夢を見て、それに殉じたスペクターが作りたかった世界、ロマンチックで厚い音の壁の向こうのどこまでも透き通った感覚。これを聞いてると、忘れそうになる感覚が甦るよう。
ドキドキするのでも、わくわくするのでもなく、ただ時間のリズムが変わるだけ。でも、たったそれだけで、なんでこんなに嬉しくなるんだろうか。こういう音楽に出会えるから、いつだって何かを探していられるんだと思うよ、本当に。