ネオン

答練の論文を書き終わってタバコを吸いに非常階段へ出ると、池袋の空はネオンで明るい。普段見えないものがここからはよく見える。そして、子供の頃からいる街なのに、ずいぶん違って見える。鏡の向こうのあいつは笑っているか?
他にはなんにもないのに適応性だけは持ってるせいか、2週間で問題なく論文書けるようになった。合格点は余裕で突破していると思う。ちゃんと準備して、最初は壁に全力でぶつかって、そこで自分の弱点が見えたら、それを埋めるだけで、次のチャンスでは先へ行けてる。いつもながら、こんなに早く進めていいのかとさえ思う。昔は、無駄な努力はしないとか、意識してやったりしてなかったのに。
いや、今はそこで生まれたわずかな余裕で、見落としたもの、落としたものを拾いに行けばいい。俺は、こことは無関係の場所でたくさんの貝殻を拾い集めて、それを光の下にさらしたいから、こうしてやってるはずなのに。いや、それだけは忘れるわけにはいかない。
手の先にあるのは金でもないし、力でもない。
たぶん今は空を飛べても、それほど満たされたりはしないだろう。それでいいんだ。