Anne Briggs / The Time Has Come (1971)

julien2005-05-25


Styles : British Folk , Singer/Songwriter , Folksongs , Folk Revival
ここにあるのは淡々と爪弾くだけのギターと彼女の歌声だけなのに、なんでこんなに美しい世界が作れるのか不思議。音楽が成立するのに、実はそんなにたくさんの音は要らないのかもしれないとか感じる。
同じブリティッシュ・フォークでも、サンディ・デニーとはまた違ったより繊細で透明感のある声。彼女自身、繊細で儚げで美しい佇まいなのに、でも、本当は気の強い芯のある女性のようらしく、それはここにあるだけの声からも伝わってきます。
トラッドとか、フォークというと、どこか枯れた感じや政治的なイメージを持ってしまいそうなのに、そこがまた違って、とても艶やかでエロティックな世界。幻想的なようでいて、優しく現実に入り込んでくる音。弛むことのないリズムは、時間の流れを忘れさせてくれるだけじゃなく、瞬間瞬間の肌理細やかさまでも鮮やかに映しだしているようです。
細部を緻密に描くのではなく、一見ラフに描いているようでいて、実は刹那的に失われてしまうものまで見事に写し取ったデッサンのよう。時間を漂うようになめらかな曲線だけが、いつまでも目の前を通り過ぎていきます。目を閉じてそんな音に身を任せていると、ため息ばかり。