Coralie Clément / Bye Bye Beauté (2005)

julien2005-04-15


Styles : Variété Française , French Pop
1stに当たる前作で一気に人気者になったフランスのヒロイン。でも、彼女はお兄さんである天才バンジャマン・ビオレーの完全なるピグマリオン。けして巧い歌手ではなく、フレンチ伝統のウィスパー・ボイスが必殺の武器。前作は、全編ラウンジっぽい雰囲気、ボサノヴァありサンバあり、そしてとにかく美しくポップでメランコリックなメロディとアレンジで完成度は驚異的。不思議なことに、バンジャマンの自作はかなりダンディで繊細な私小説的な作品ばかりなので、そういう意味じゃ兄貴の持つ比類ないポップさを引き出すのは実は彼女しかいなかったりする。それにしても、なぜ名字が違うのだろう。
あと、これは国内盤を買わないと分からないんですが、とにかく歌詞が文学的。前作の「私の部屋の窓は内庭にだけ開くの」なんて、本当に印象的。ボードレールランボー、ラディゲ、アポリネールゲンスブールと続く流れが続いてるわけです。
で、この2ndですが、前作の延長を期待したリスナーを完全に裏切るほど雰囲気が違う。1曲目からいきなりのロックで驚きました。まあ、ロックというよりは、むしろイエイエ(もしくはギターポップ)で、この辺りは伝統をベースに斬新なアレンジを好んでするバンジャマンらしい。とにかく「フレンチ・アイドル」をどこか意識した作品であることは間違いない。ロックなのは、何曲かの作曲にクレジットされているダニエル・ロルカという人物の影響でしょう。私は知らないんですが、USのナダ・サーフというバンドのベースだそうです。
そして、さらに驚くのは歌詞。けして暗くは無いサウンドと対比させるかのようにアンニュイ。これ、フレンチ特有の毒なんでしょうが、それにしても前作の歌詞に出てくるルゥ(コラリーの分身)が、なんと最後には死んでしまう(「エピローグ」)。ところで、この曲に出てくる「葬式には誰も来なかった」という下りに、ビートルズの「エリナー・リグビー」に似たイメージを持ったのですが、全然意味は違いますね。
アルバムのなかでも白眉のロック・ナンバー「退屈にさよなら」は、「扉は閉めない、逃げはしない、今日はいわば死ぬにはうってつけの日」といった感じ。でも、こういうのに私はめっさ弱いので、やはりバンジャマンはいつも期待に応えてくれる。
アルバムタイトルの「バイバイ、ビューティー」からも、大人になったコラリー、ということがコンセプトだと思わせますが、それにしてもエスプリが凄まじい。雰囲気的には、ケレン・アンのような悲壮さは感じないので、きっと楽しんでるのでしょう。そもそもタイトルだって、バンジャマンのイニシャル(BB)から連想したんだと思われますし。そこにコラリー(CC)を並べたかったに違いない。というか、ジャケット見れば明白。ただ、それをエスプリにつなげるのは他の国のミュージシャンには無理でしょうね。いじわるさが悪趣味にならないバランスが見事。さて、いつのまにか出ていた兄貴の新作はどうなんでしょう。