ニューワールドサービス

julien2005-01-19

ここも有名な喫茶店。銀座、といっても有楽町や日比谷からのほうがずっと近い三信ビルの1Fにあります。
この建物自体がとても古いもので、もう築50年は経っているのではないでしょうか。 建築様式については詳しくないのですが、内部の空間は素晴らしく、かつての建築家が抱いていた美意識を感じます。5分歩くとある数奇屋橋のDiorが美しいのとは次元の違った世界。本当に銀座は良い街です。
この喫茶店は、サンフランシスコ平和条約前の、日本がまだ占領下にあった時代からあるそうです。そういえば、ここからGHQ本部が置かれていた第一生命ビルは目と鼻の先。ここの特製ハンバーガーが別名”進駐軍バーガー”なのは、その辺りに由来があるのかもしれません。ちなみに、これは本当に美味しいです。分かりやすく言えば、マックよりもバーガーキング
内装は、開業から一度も変えてないという通り、まさにレトロ。おしゃれというより、果てしなく渋いのです。今はいつの時代なんだと錯覚するくらいに、レトロ。店員さんも、昔の時代から抜け出てきたんじゃないのかと思うくらいに、現代色無し。前の席に米兵が座って、ハンバーガーをむさぼり食っていたとしてもなんの違和感も感じないでしょうね、間違いなく。

それにしても、この店の最大のかっこよさは何よりその名前だと思う。"New World Service"なんて、今の日本人には誰も思いつかない。つまり、このセンスを「ダッサ」なんて思う人間は一人もいなかった時代が、残してくれたんですよ。
一面、焼け野原になって憔悴しきった日本に、モダンと勝者の驕りを引っさげたアメリカが入ってきた。そこには、現代へと繋がる、日本人の感覚が一気に変わっていく場面が確かにあったはずだ。その瞬間の感覚がここには残っていると思う。
「米国の空気」も「本場の味」も色褪せ、モダンでもおしゃれでもなく、ただ古い喫茶店だというのに、不思議に落ち着くのはなぜだろう。この照明の暗さがいいのかな。
古いものや、時代のなかで失われそうなものに惹かれるような方は、行かれて後悔することはないと思います。