あれから
昨日でちょうど1年です。エリオット・スミスが亡くなったあの日から。
この日はトリュフォーの命日でもあります。
でも、彼はすでに遠くても、エリオットのことはつい昨日のことのように思えてしまう。
けれど、1年は過ぎたんですね。
気持ちから言っても、去年のあの日にこのことに触れることはできませんでした。
あの日からも彼の声を何度も聞いて、曲によってはその度に悲しくなってしまいました。
けれど、普段は思いもかけないのは、彼のことが記憶から少しづつ消えているからなのでしょうか。
確かなのは、彼の声が日常のなかに少しづつ沁みこんでいることです。彼の声、彼のメロディが。
けれど、それがあの日から始まったのだとしたら、とても悲しい。
それこそが、彼がもういないという事実の裏返しなのだとしたら。。
こうして時を少しづつ置いてしまうと、どんどん彼が遠くなっていく気がする。
あんなに身近にあった音なのに、それがどんどん遠くなっていく。
それはけして彼への気持ちが薄れるのではなく、ただ彼の体温が感じられなくなる。
だから、今のこの日に、何かを考えなければいけないような気持ちになる。
彼が少しでも近くにいる間に。
でも、私は彼に何を言えるのだろう。
そもそも、そんな風に思うこと自体がとても不思議に思える。
彼に何かを伝えようなんて、あの頃は思いもしなかった。
僕は彼から貰うだけだったから。
そういう人になるとは考えることもできなかったから。
突然、人は死んで、想いだけが強まってしまう。
想いだけで、私は言葉にならなくなる。
何より下手な感傷や酔いが恐ろしい。
なんで彼のことを、こんな風に考えなきゃいけないんだろう。
いまでも、これだけは受け入れられない。
でも、きっと、あなたが遠くなったんじゃない。
私が、あなたより遠くに来たんです。
あの日から少しだけあなたよりも私は世界を眺めて。
あなたがいなくなってしまってからも世界はそんなに変化していないかもしれないけれど、
それでも、私はそこで息をして、そこで泣いて、そこで笑っていた。
今更、あなたを責める気はないし、ただ悲しいだけでいることもないです。
でも、やはり寂しい。
今のあなたの声を、もう私は聞くことができない。
これからもずっと記憶のなかの景色と時間のなかで、歌っているあなたを見るだけだから。
いまあなたが居るところはどうですか?
もっと綺麗なメロディを見つけることができましたか?
それを聞けないのが本当に寂しいよ。本当にくやしいよ。
あなたが見つけたメロディは、今も私のなかを流れています。
でも、それを見つけられたのは、世界に一人あなただけ。
あなたの代わりなんて、いるわけないよ。それだけはずっと変わらない。