"失われた感覚を求めて" Vol.2 〜British Invasion〜

julien2004-09-21

ブリティッシュ・インヴェイジョンとは、直訳すれば「英国の侵略」。当然のようにアメリカから言われた言葉で、1964年のビートルズ上陸から始まる英国勢のチャート支配を指します。
この現象がどう凄いかといえば、まず音楽的には辺境でしかなかった英国勢が世界の頂点に立ったこと、エディ・コクランバディ・ホリーの死に象徴されるように下火になったロックンロ−ルをアメリカに甦らせたこと、そしてその流れが現在に繋がるようなロック潮流の原点になったことにあります。

ブリティッシュ・インヴェイジョンと呼ばれるグループは、まず何と言ってもビートルズ、そしてキンクスストーンズ、ハーマンズ・ハーミッツなどが挙げられますが、それは後の時代から見たものであって、やはりビートルズの存在が圧倒的だったのが真実です。
彼らはチャートの上位を独占し、レノンの「ビートルズはキリストより有名」発言はこの際に言われたものですが、彼らと唯一対抗しえたのがスプリームスなどのモータウン勢のみという現象は、世界のポップの中心であったアメリカにとってはまさに「侵略」であったとしか言いようが無い。

これ以前の英国は、主流がジョー・ミークに代表されるようなフィル・スペクター風のポップス、クリフ・リチャードに代表されるプレスリーなどのロックンロール、シャドウズのようなインストグループのように、ほとんどアメリカ音楽の大きな影響下にあるもので、アイリッシュというトラディッショナルなものがあったとは言え、ほとんど根無し草に近い状況でした。しかし、このブリティッシュ・インベイジョン以降、一気にオリジナルなものを生み出していく。これはもうほとんど革命と言ってもいいくらいの大変化であったと言えるのです。

つまり、アメリカのオリジナル・ロックンロ−ルのように時代の中で必然的に生まれた音というよりは、これははっきりとした理由を持った変化といえる。
そして、それが何なのかと言えば、これもレノン&マッカートニーという二人の天才の力によったものが大きいと言えるのです。
この二人の最大の特徴を言えば、斬新なサウンドや新しいものを生みだしていく想像力もさることながら、この時期に関しては、史上最高のメロディ・メイカーであったこととと、ずば抜けたポップ・センスにあったように思うのです。
これは、例えばエディ・コクランプレスリーのようなパイオニアの作品と聞き比べれば明白なのですが、ビートルズサウンドは、彼らよりもモータウンといったポップR&Bにはるかに近い。
50年代から始まる良質なポップ・ミュージックに慣れた人々に、ごく自然に受け入れられた本当の理由は、彼らのポップ・センスにあったと言えるのです。

しかし彼らの影響力は、ブリティッシュ・インヴェイジョンによってロック・ミュージックの出発点を切り開いただけでなく、その発展にも寄与することになるのです。
ポップスへの興味からビートルズを愛した人々は、ポップスを越えて彼ら自身に惹かれるようになる。そして、その後の彼らを愛したリスナーは、新たな耳を持って音楽的変容を受け入れるようになるのです。