Slowdive / Just for a Day (1991)


シューゲイザーの代表格スロウダイヴ。
メディアによって命名されたシューゲイザーの意味は”自分の足元を眺めてる連中”という有難くないものなんですが、確かにノイズの快楽に沈みこもうという感性は、厭世と退廃のイメージに嵌りすぎて、中毒者を多数生んでいるのが現状。
このジャンルの代名詞はいうまでも無くMy Bloody Valentine。ただ、彼らにしても時期によって音がかなり異なっていて、衝撃を与えた"You Made Me Realize"とあまりに早くシューゲイザーを完成させてしまったと言われる"Loveless"とではノイズの意味自体がかなり違ってきています。攻撃性から快楽性へと移りかわってゆく。
Rideがデビューする90年とラブレス発売の91年を黄金期として、シューゲイザーの黎明期というか雛形を挙げれば、まずはJesus & Mary Chain。そして、Cocteau Twins。あと、House of Loveなんかも挙げていいと思う。
彼らが生み出したノイズやドリーム・ポップが、マンチェスターが静まり始めた90〜92年にギター・ロック、ポップとして突如大発生するわけですが、どうも”シューゲイザー”としてカテゴライズされた結果、十把一絡げにグランジブリットポップの流れで一掃される。
本来は、このスロウダイヴあたりはもっと高く評価されてしかるべきなんですね。彼らはマイブラというよりは、明らかにコクトーツインズ直系。
アドラブルのような性急なビートもなく、ライドのような甘酸っぱさもない。チャプターハウスのようにダンスフロア向けでもなく、ラッシュやブー・ラドリーズのようにブリットポップに繋がるようなポップさを持つわけでもない。
ただ静寂とノイズの対比のなかから浮かび上がる絵画的なイメージを持つ音の美しさは、シューゲイザーのなかでもまさに別格。シューゲイザーの重要な側面である美しいメロディを語る上でも、素晴らしいバンドでした。
これは「ロック史」のなかであまりに不当に扱われるシューゲイザーの、多面性を伝えるアルバムだと思うのですが。
厭世的、退廃的な美の何が悪い?って感じです。「ブルー→厭世・退廃」は確かに情けなく弱弱しいものですが、これだって英文学の伝統の一部ですからね。

(to right)
My Bloody Valentine "Loveless" , Ride "Nowhere" , Chapterhouse "Whirlpool" , Medicine "The Buried Life" , Lush "Gala"