The Libertines / The Libertines (2004)


もう、いいや。黙っていられないので、さっそく書いてしまいます。もう7回聞いたし。


結論から言えば、この作品は前作にまったく及ばない。
楽曲もキャッチーではないし、印象に強く訴えるものもほとんど無い。どの曲(シングルでさえ)を取っても、まとまりの悪さは驚くほどです。キャッチーなリフやメロディが、宙ぶらりんに殺されていくような曲ばかり。
ただし、勢いのある曲が少ないという情報は嘘です。むしろハイテンポな曲は多い。ただ、どの曲も妙に「中断」するから、そう感じるんだと思います。
明らかに前作の曲からそのまんま持ってきたリフで始まる曲や、ホットホットヒート等他のバンドからリズムをパクってきたような曲もあります。
はちゃめちゃにバランスの欠いたスカスカなサウンド。でも、これはストロークスのように狙って作った音でもない。
変に転調を繰り返す。パンクというより、ほとんどポスト・パンクニューウェイブ。聞いてて居心地が悪いったらないよ。
落ちてると思うと、急にテンションが高くなったりするし、完全にドラッグの影響ですね。コカインでハイに、ヘロインにダウン。そんなことしてると確実に死にます。



それにしても、なんて正直なバンドなんだろう。
この内容でセルフ・タイトル。シャーラタンズの作品とはまったく別の意味で自分をさらけ出してる。かといって、ビートルズのようにメンバーの個性が炸裂するわけでもない。
こんなタイトルになった理由は、現在の自分たちを表現するのに他にいいタイトルが無かったのか、単にアルバム名を考えるのが面倒だったのか、それともその両方かなんでしょうが、それにしても本当に正直なバンドだと思う。
カールはともかく、ピーターのここ1年から現在の状況を考えたって、実質的にバンドとして活動するのは無理だったに違いない。


その結果、どうなったかって言えば、この二人がとてつもないロマンティストで叙情的だってことが異常なほどに出てしまった。この切なさや色っぽさはなんなのかと思う。つまり、ありのままなんでしょう。不気味なほどに艶っぽいジャケットそのものですよ。このジャケだって、ライブの時に撮ったままのもののようですし。
これも狙ってやったものならミック・ジョーンズ、恐るべしです。何もしないことが、ここまでバンドを表現してしまうとは。


ただし、これらは全部、通常の基準で評価をすればの話ですね。正直に言って、どう言えばいいのか分からないんです。


もう、なんて最高のバンドなのかと思う。こんなに可愛くて切なくて、素晴らしいバンドが他にいるのかとさえ思えてくる。
こんなバンドの音をリアルタイムに聞けることをなんて表現すればいいのか。これほどどうしょもないアルバムが、なんでこんなに深く沁み込んでいくのか、戸惑っています。
あー、もう大好きです、これ。想像以上に、いや、想像とはかけ離れていたからこそ、本当に素晴らしいアルバムです。5回聞けば10回、10回聞けば20回聞くことになるに違いない。それは、アルバムが、というより、リバティーンズが最高なんです。
これ、個人的に今年のベスト・アルバムになるかも。。。いや、冗談ではなく本当に。


・追記(9月某日)
後半に書いた直感のほうがやはり正しかったというか、このアルバム最高です。間違いなく現時点での本年ベスト・アルバム