サガン『悲しみよ こんにちは』

julien2004-07-24

イメージの恐さってあると思う。サガンで最初に読んだこの本。それと同時にセンセショーナルなデビューを飾った話、当時の彼女の写真を見た。
何もないアパルトマンの一室、床の上に置かれたタイプライター、ショートカットの美少女。ジーン・セバーグ主演の映画は見たことがない。セシルカットも知らない。僕にとってのセシルはサガンだ。
そのせいか、透徹したような知性ではなく、繊細な少女のイメージしかない。
だから、アンファン・テリブルではあっても、レイモン・ラディゲほどの衝撃は無かった。けれど、このような言葉でしか語れない感傷が、胸について離れなかった。
あれから一度も読み返したことはないし、読み返したいとも思わない。このようなセンチメンタルさは、今の僕には恥ずかしい感じがしてしまって辛い。経験が淡いものとしか認識されない時期のことを思い出すのは苦痛だから。
サガンを読み返すのは、もう少し経ってからにしようと思う。