Wires to Flying Birds

The Veilsの曲名から
三国志で有名な曹操の三男の曹植は、父親以上に素晴らしい詩人で、私はこの曲名から彼の「野田黄雀行」を思い出しました。
この詩は、父の死後に兄から疎まれ、友人でもあった家臣はみな殺され、自身も政治の表舞台から追放された曹植の想いが錐にも喩えられた鋭い言語感覚で表現された絶唱なのです。

”野田黄雀行”曹植
高樹 悲風多く 海水、其の波を揚ぐ。
利剣 手にあらずんば、交わりを結ぶに何ぞ多きをもちいん。
見ずや 籬間(りかん)の雀、鷹を見て自ら網に投ずるを。
羅(あみ)はる人は雀を得て喜ぶも、少年は雀を見て悲しむ。
剣を抜いて羅網(らもう)をはらえば、黄雀、飛び飛ぶを得たり。
飛び飛びて蒼天に摩し、来たり下って少年に謝す。

少年は鋭利な剣を持たない者が、多くの友達を持ったところでなんになるだろうと嘆く。(みんな殺されてしまうじゃないか、ってことでしょうか)
でも、鷹を恐れて自ら網にかかってしまった雀を見て少年は悲しむ。そして、彼は剣を抜いて雀を助ける。雀は飛ぶことができるようになって空へと飛び上がっていく。そして、少年のもとに舞い戻り、感謝する。
内容を見ればたったこれだけの詩が、曹植の筆を通すとなんともいえないほどの想いが伝わってきて、私なんかは心が平静じゃいられなくなってしまう。「剣を抜いて羅網をがはらえば」が特に好きです。
この少年の姿は、いろんな人に自分のことのように重なってくるのかもしれない。そして雀もまた、自分の姿なのでしょうね。