P J Harvey / Dry (1994)

julien2004-06-13


収録曲の「シーラナギグ」は性器を拡げた古代の石像の名前で、このモチーフを使って恋人からふしだらだと蔑まれる女性のことを歌ったものなのですが、こういう問題に関しては僕は何も言えません。なら書くなよ、といった感じなのですが、分からないっていうだけで無縁なわけではないのです。
まず知り合いにいる。自分でそう言ってるくらいだし、実際にこのように振舞ってるのだから。
ただPJハーヴェイも自虐的に言っているわけではなく、男性からの視点を踏まえて、女性でしか言えないことをシャウトするわけだから、この言葉を単純に解釈することはできないんです。その子にしても、行動だけで何かを言うことはできません。僕には理解できない感情が外側に溢れる。その溢れ方を表面的に見て、ふしだらとか言えません。やはり分からない。とりあえず石像に喩えることで、どこか神秘的なイメージまで生まれてくる。
ただ、男性には「ふしだら」という言葉は使わないし、やはりこれはジェンダーに関わる問題なんでしょう。
とりあえず、私には田嶋陽子上野千鶴子より、PJハーヴェイの歌のほうに脅威を覚えますね。90年代は、女性であることをシャウトするロックンローラーが多いように思うのは気のせいでしょうか。
それにしてももの凄いアルバム。最初は2ndの『Rid of Me』を聞いたのですが、スティーブ・アルビニにプロデュースされてまとまりのあるものにあったそっちと比べると、この混沌とした空気はなんなんですか。90年代の半ばにここまでブルースが呼吸をしているアルバムが存在しているのは奇蹟です。洗練さをひたすら目指す音楽界にあって、ここまでリアルに身体を感じる音の存在感は圧倒的。これが、「シーラナギグ」というものの本質なのかもしれません。個人的にこれに最も近いと感じるアルバムはパティ・スミスの2nd『Radio Etiopia』。

  • My Favorite Tracks

M2: O Stella , M3: Dress , M4: Victory , M6: Seela-Na-Gig , M11: Water
ASIN:B000001F0H