Pink Floyd / A Piper at the Gates of Dawn (1967)


ピンク・フロイドで最初に聞いたのは有名な『The Dark Side of the Moon』(邦題”狂気”)。最初は意味分かりませんでした。凄く良い作品だってことくらいは分かりましたが、クラシックとロックを並行して聞いてたので、これのどこがロックなの?クラシックじゃん、てな感じでした。
というか、いちばん良く分からなかったのが、要するにプログレシッブ・ロックっていうのはどういう雰囲気のなかで生まれてきたのか、っていうのが全然掴めないってことなんですよね。
知的で構築的かつ刺激的なのですが、やはり身体じゃなくて頭で作ってる音楽だな、と。ただ、その割には紛れもなくエネルギシュで強烈だし、嘘臭さや怪しさは全然ない。この人たちのハートは紛れもなくロックンローラーのものなんでしょうが、どう転ぶとこういう音になるのか分からん、ってことです。
で、その謎が解明されたのが、クリムゾンの1stと、フロイドの1stであるこれを聞いた時ですね。
ブリティッシュ・ビートとサイケデリックの橋を繋ぐようなこの音。。これだ、これがプログレの原点なんだ!、って物凄く納得がいきました。
で、こういう二つのジャンルの狭間の崖を乗り越えるのは、知的な綱渡りではなく、天才による飛躍・跳躍なわけです。
そう、Syd Barrettこそが、プログレという世界への道をひらめいたとしか思えないのです。そして、それは冷静さに裏付けられた知性ではなく、狂気とすれすれの天才的直感だと思うのです。
あまりにシュールな歌詞と、そこからイメージされたようなこの音、音、ひたすら続く音。精神的に崩壊寸前としか言いようがないバンドのアンサンブルも最高で、聞いてると鳥肌が立ってきます。
プログレとしてのPink Floydを完成させるRoger Watersも、ここでは1曲しか書いてません。あとは全部シド。
で、ここから強引に「取り残された」っていう例のテーマに結びつけるんですが(汗)、ここには藝術の世界でよく起こる現象、つまり、最初に天才が道を切り開き、次いで多くの秀才たちがそれを完成させていくというパターンが見えるとか思うんですよ。
きっとロジャーは友人であり、天才であるシドに心酔してたと思うんですよね。LSD過多で廃人になったシドが去り、だからこそ残された者としてロジャーはそれを自らの才能で、その能力の範囲で受け継いでいく道を選んだと思うんです。狂気が薄れていく過程、なんて言うとロジャーに失礼なので、名曲"Crazy Diamond"はシドのことを歌ったものですし、あえてダイヤが磨かれていく過程といってもいいかもしれません。だって、私にはロジャーだって充分に驚異的なミュージシャンですから。

  • My Favorite Tracks

M1: Astronomy Domine , M2: Lucifer Sam , M3: Matilda Mother , M4: Flaming

M6: Take Up Thy Stethoscope and Walk , M8: The Gnome , M9: Chapter 24 , M11: Bike
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