時の流れって怖いなと思う。あの頃は盲目だった私も、もうあの人のことを少しも許せなくなっている。天衣無縫でいることを変えられないでいるのは、あの人らしいなと思う。でも、これからも本当に大切なものは手に入れられないで苦しむんだろうとも感じてしまう。よく笑っている人だったけど、そんな時はいつも本当は泣きたいんだろうと気付いていた。でも、そのままでいいと思ったから、僕は彼女を少しも変えてあげられなかった。変えようなんて望みもしなかった。彼女自身それを望んでいなかったから、そんなことが無理だってことも分かってた。
彼女は自分の望むことしかしないし、自分を軽く修正して周りに合わせることさえ、できない人だった。だから彼女が妥協する時は、彼女が自分で無くなる時なんだろうね。いつか、そんな時が来るのかもしれない。そして、それは近いのかもしれない。あんなに変わらないでいられる人は凄いと思う。それがいつまでも続くことを僕は望みます。でも、僕は何もできないし、もうする気もない。
僕がいちばん嫌いな言葉はさよならだけど、もう彼女に他にどんな言葉をかけてあげられるっていうんだろう。半端に記憶のなかで変色するのを待つのは、僕自身にとって凄く辛い。彼女は昔と変わらないから、今だって凄く好きなことは変わらない。
もう昔とは違う。いつまでも破滅型の恋に酔ってなんかいられない。あの人を変わらぬあの人のまま好きでいるのは、もう無理だ。そして、妥協した彼女を好きでいられるわけはないのだから。
さよなら。こんな言葉はもう二度と言わない。