The Doors / The Doors (1967)


こんな日にこんな重い作品書けるわきゃあないと思いながら、「知覚の扉」を開いてしまおう。
これを最初に聞いた頃は、正直よく分かりませんでした。これを聞いてジム・モリスンの歌が凄いことを理解できない人はちょっといないと思うんですが、どう受け止めればいいのかが全然分からず、ビートルズくらいしか60年代ロックを聞いたことなかった頃だったので仕方ないっていえばそうなんでしょうが、このアルバムが強烈に伝わってきたのは数年してからですね。
それ以降は、ジムの声や、ドアーズの特徴でもあるレイ・マンザレクのオルガンなどが恐ろしく意味をもった何かとして現れてくるのです。まさしく、詩人ウィリアム・ブレイクの「知覚の扉」からグループ名を取った彼らがまさに「Break On Through (To the Other Side)」しようとする姿が。
安易な言い方をすれば、ドアーズの(当時における)新しさっていうのは、ジャズやクラシック、アートや文学といった今までのロックには無縁だった要素を、まさにロックという文脈で解釈してみせたことにあると思うのです。特に、文学。ジムの卒論はオランダの画家ヒエロニムス・ボスについてのものだったそうですが、ボードレールを崇拝してたという逸話にしても、強烈な知性が、ロックの性的で暴力的なレールの上で展開される凄さ。それは、パティ・スミスにとってのフェイバリットアーティストがジムだということにうなづかせるし、ロックが公序良俗の正反対であるからこそ、知性を伴った感性によらねば、単なるノイズに過ぎなくなってしまうってことを、彼はまさにアンヴィバレンツに表現したってことでしょうか。
これこそ本当に美しいアルバム。美しさを、まさにシェイクスピア的な両義性でもって語ったという意味で。

音について具体的には語りません。聞いてみてください。何度も。

この1stの邦題は「ハートに火をつけて」。この言葉は、私にとっての最高の価値基準です。ハートに火がつかない恋も音楽も言葉も、そんなものはなにも要らない。
ASIN:B000002I25