レイアーティーズからの手紙

julien2003-12-29

親愛なるオフィー


聞こえるだろうか、悲しみにくれるあなたの耳に、この兄の声が届くだろうか?


君がなぜ今苦悩を連れ合いにして生きているのか私には分からないよ。
今となっては届かない言葉かも知れないし、ハムレット殿ももうここにはいない。そう、他ならぬこの私が、彼をハデスの国へと突き落としたのだから。

けれど、聞いて欲しいのだ。人間関係の襞など容易には見れるものではないということを。
オフィー、お前が言いたいことは分かってる。感情を理性に乗せて彼を殺害した私などに、そんなことを言う資格がないことは、私自身十分に承知しているつもりだよ。
けれど、これは分かってほしいことなのだ。私は、犯した罪に対する十分な報いをいま受けているのだよ。オフィー、誰よりもお前を愛していたこの兄の言葉だ。ここに嘘偽りは微塵もないことを、神に誓おうという私の言葉に、今は静かに耳を傾けてほしいのだ。
私の傍らには、もう私を愛してくれる人も、愛してくれた人もいない。
孤独が人を苦しめ、その者の持つ光さえ、その闇に包まれて消えてしまうことを私は知った。これが私に対して与えられた罪だよ。


勿論、孤独などはただのエゴに過ぎない。でも、それは誰もが持ちうるものだ。それに巻き込まれることの苦悩もまた、お前が人に対して与えてしまっていることなのだよ。


世界には時間よりも早すぎるものがたった一つだけある。
それは人の理性であり、それがもたらす判断。
いつだって人が人を判断するのは早すぎる。時間の流れに逆らい、いつも人はその中で安心を得て、そして苦悩を繰り返す。愚かしいことだとは思わないか?だが、それはいつだってそうなのだ。


おそらく私もまた、お前を理解していないのだろう。お前のこと分かっていると思いすぎてしまっているのだろう。
判断というやつは、気付かぬうちに私を支配している。時間も世界も、それに比べたら遥かに自由なものだよ。


分かって欲しいのだ。けして人を判断しようとはしてはいけないのだよ、オフィー。理解するんじゃないのだ。私たちにできることは、理解じゃない。愛することだけだ。
私はお前を愛している。だから、もうお前のことで苦悩したりはしない。
私がするのは悲しむことだけだ。愛はいつも悲しみと喜びを伴い、永遠に途切れることはなく、続いていく。単純なようで、でも、絡み合ったままの糸のようだ。けれど、ほつれることはけしてないのだ。

亡きクローディアス王もまた、そんな孤独な一人の人間に過ぎなかった。そう、私の心にはもはや迷いはない。


ああ、何もかも理解することから離れてみれば、この世はまだなんと美しいことだろう。
お前の目に映るあらゆる悪徳も汚濁も、悲しみと喜びの別の姿に過ぎぬ。その名こそ愛だ。


お前のように純粋すぎるものに苦悩は似合わない。
お前は泣き、笑い、喋り、そしてそのほかには何もする必要のない女だ。そして、そんなお前を私は誰よりも愛し、誰よりも羨ましく思うのだよ。