彼氏彼女の事情

julien2003-10-20

猟奇的な彼女と言ってみたところで、それが単なる自己肯定に過ぎないとしたら、私は何も変わらない。
バタイユなら彼女のことを「呪われた部分」とでも言うのかしら。
私は確かにそれを呪ったりしないし、自分を恥じてもいない。
ここでも理性が問題になる。意識的に眺めるなら、彼のことを無視できないわ。


理性は不条理で非合理なものが大嫌いだから、幻惑され、引きこまれる自分を誡めたりする。だから、あの時の私はロープと柱を探していた。人は知恵で、欲望や現実を乗り越えようとする。仏教とか、本当にそういうものよね。


でも、あれはけして単純な恐怖じゃなかった。あの時怖かったのは、彼女達じゃなくて深い海のほうだったから。
時々私は、自分の船が海の上に浮かんでいることを忘れたりする。けれど、いつだって、海は私の下に広がっている。
実際の私は泳げるから、海に放り込まれても死ぬことはないわ。でも死ななくても生きていられるわけじゃない。それは確かなこと。


文化の恐るべきところは、不合理や野性を、そのままに社会のなかに据えること。ワーグナードラクロワオスカー・ワイルドワーズワース。彼ら浪漫主義者たちは、そうやって近代の心臓を、流れるようにブスリと刺した。


顰に倣って私もまた、象徴の裏に棘を含ませよう。