My Bloody Valentine / Loveless (1991)

人気 ★★★★  個人 ★★★★★ Genre : Neo Psychedelic Rock

『Virgin Suicides』に続いてソフィア・コッポラ監督の2作目『Lost in translation』が来年に公開されます。が、一部のファンを狂喜させるているのは、そのサントラにマイブラKevin Shieldsが曲を提供しているということ、これに尽きるでしょう。


マイブラMy Bloody Valentineが『Loveless』を発表したのが91年だから、かれこれ12年の月日が流れているわけですが、この12年はそのまま彼らのファンが新作を待ちわびていた時間でもあるのです。

この作品に解説を付けようとしたら、いつまでも終わらない気がします。少なくとも、僕はいくらでも語ることができるし、それくらいにこのアルバムの音は確実に自分の一部になっています。

音を聞けばすぐに分かるのですが、彼らはトリップしすぎました。。要するにあまりにクスリ漬けだったんです。だから、サイケデリックという言葉でこの音を語ることは可能でしょう。けれど、彼らはそれ以上に覚醒していたともいえるでしょうね。単なるジャンキーに、こんな音は構築できませんから。
メロディの上にハーモニーを重ね、その背景をノイズで塗りたくったような音・・・
ジャクソン・ポロックのアクションペインティングのように、ここでは絵の具の代わりに音が空間のキャンバスの上を飛び交います。けれど、ポロックの作品がそうであるように、彼らにもその爆発的なエネルギーを構築美に高める"センス"がありました。
これほど美しいノイズはないし、これほど構築された音もそうはないでしょう。Led Zeppelinの1stに迫る構築美がここにはあります。
このぼんやりとした狂気の音が、ありふれた日常の上に重なっていく。このアルバムを始めて聞いた日の感覚を僕は今でも忘れません。


Snoozerの最新号でkevinが映画のサントラについて語るのを、僕は帰りの電車の中で読んでいましたが、


「ソロを出したあとに、昔からずっと言い続けていた『少なくともあと1枚のレコードを作る』という約束を、きっと果たすよ。いい1枚をね」


これを読んだあと、僕は電車の中にも関わらず涙を流してしまいました。

そういえば、ソフィア・コッポラは以前、自分のフェイバリットアルバムとして、この作品を挙げていました。みんな同じ気持ちなんでしょうね。
彼女のおかげでkevinが再び歩き出す気持ちになれたのなら、僕は彼女に最大限の感謝を捧げます。