グラス

全然文字にならない。私の文字は本当に頼りない。書けば書くほど、全部嘘に思えてしまう。でも、もっと頼りないのは私の声のほうで、詩的でも雄弁でもなくて、まるで子供のように同じことばかりの繰り返し。でも、ずっと信じられた気がする。詩を読むようにはいかないけれど、技巧なんて要らないのだよ、と昔の私に言ってあげる。


目を閉じてしまって、ずっと先の、それこそ何十年も先のある日に私は目を開いて、そこに見るものを私は知っている。適当なことを言っているんだねと言われそうだけれど、それでも私は絶対的にそれを知っていると誰にでも言えるの。だから、それだからこそ、私は目を開ける。見るものすべて、見たものすべて、全部を差し上げるために、目をつぶってはいけないの。
がたがたと肩を揺らしながら進む鉄の箱。そこで少しだけ汗をかいた。恥ずかしくもなんともない。きっと本当に汗をかくことの意味も、何もかも全部が綺麗で、全部に意味がある。私が過ごした時間が全部、本当に綺麗。こんなことはいくら頭で考えてもありえなくて、すべては定まったものであって、そのためにたくさんの夜があったに違いないから。これからずっと先も同じ。だから、やっぱり目を開ける。寂しさは悲しみとは違うから。


小さなゴミも見せてくれるような透明で深い水の色。本当に綺麗な水色。クラウンを被ったエンブレム。それが私の誇り。他の何かが代わりになれるものでもない。だから、私は割れないグラスになるの。
そして、それはガラスのような心なのではなくて、今の私の唇が、乾いた風でガサガサになっても、リップクリームなんかよりももっと大切なものが私にはあるの。