久しぶりの更新ですが。。

一連の構造計算書の偽造問題は凄いですね。重畳的債務引受まで出てくるとは思わなかった。とりあえずコメントを言えば、あれってマスコミで言うほどヒューザーの社長の自己中だけが原因じゃないですね。
まず債務引受っていうのは、ずばり相手の債務の肩代わりなので、債権者にしてみれば債務者の変更になるわけです。で、これを自分が誰かに金を貸してる気分で考えてみればいいんですが、要は「返せ」って言う相手が変わるわけです。となると、どうも金を返してくれそうにない相手に変更されたら困るわけですよ。というわけで、債権者の承諾がない限り、債務者そのものが入れ替わる場合(免責的債務引受)はできません。


で、今回の場合を見て見ると、肩代わり人になるのが、まあ倒産は避けられそうにない会社です。住人に金を貸している会社からしてみれば、まだ住人を債務者にしておいたほうが返してもらえる可能性が高い。というのも、会社が債務を引き受けた場合は、間接有限責任といって、債権者の引当(つまり返して貰える金)は会社財産に限られますから、あの社長にどれだけ過失があろうと、なかなか社長本人を債務者に肩代わりさせるのは相当に難しい(保証人にする手もあるけど、まず返済不可能でしょう)。
なので、倒産した以上は、破産後の会社財産から債権額の割合ごとに分配を受けられるだけです。要するに、まず全額は返ってきません。
そういうわけで、債権者が承諾をするのはありえないので、たとえヒューザーのあの社長が聖人のような慈悲心を持っていたとしても免責的債務引受は事実上無理なんです(もっとも、公的資金が投入されるようなことがあれば話は別。しかし、これって税金ですからね。)。


反面、重畳的債務引受の場合は、元の債務者(つまりマンション住人)はそのままなので、債権者の承諾なしでもできます。マスコミが言ってるように、ヒューザーが潰れたら、住人に返済を迫ればいいわけですから。


と、恐ろしいのですが、これが現実ですし、住人にお金を貸している債権者にだって言い分があるのですから、仕方ないです。
ちなみに僕がいちばん疑問なのは、住人が金を払った相手というのは、ずばりヒューザーなので、もともとは債権者(ローン会社)から代わりに代金を受け取ってるはずなんですよね。だから、買戻しをするといえるわけですが、何よりローン会社は色々でしょうから、まずはその辺をもっと整理しないと解決はかなり先になる。
やはり、行政が出て行かないと収拾は無理っぽいです。

で、これがいちばん肝心なのですが、一連の騒動が、そもそもは建築基準法の適当な改正(民間監査機関に丸投げした点)に原因があったに違いないので、責任は取らないとまずいでしょう。
そのくせ、一部の行政機関は、「われわれは性善説に基づいて仕事をしている」とか仰っている。たぶん、私たちはみんなが悪いことをしないと思ってやってるんです、と言いたいのでしょうが、こういう無教養な発言には笑ってしまう。
なぜなら、性善説っていうのはもちろん孟子の言葉ですが、あれって「人間はもともとは善良に生まれてくるが、社会のなかで悪くなる。だから、礼儀が必要だ」っていう論理なので、さっきの発言はそもそも間違えてるのです。お話になりません。