誤魔化し

たぶんいちばん忘れてるのは、あの気持ち。ただ、もともと移ろい行くものと感じながらの日々、古文に親しみ過ぎたせいだろうか、儚いものが刹那に凝縮されたような、一瞬の煌きや、切り取られた風景が何よりも美しくて。
次から次へと、思い浮かぶものが違う。つい先日夜な夜な想っていた顔もいつしか薄れ、残り香も立ち消え、気付けば、別の時間に彷徨う。見えなくなるものは、どこか疲れた顔をしてそのまま去り行く。
駅はいつも遠近法のなかで同じ顔をしながら、細部はなんて荒れた筆跡。乱れながら、澄ました風情で、時間が止まる。
瞬間をカットアップ、そのまま繋いで、私は途切れそうな感情を一つにまとめようとする。
けれど、そう思うのことさえ幻のように、散り散りにはなれず。
ここには何かがいる。
朝の訪れを告げる何かのように、気付いた時にしか感じられない何か。
繋げるものは、単にリアルなもので、すべてに錯覚するのは、やはり足りないから。
私は欠如を、存在に変えることで、今を誤魔化そうとしてるのかもしれない。