名前 フローラ

julien2004-11-26

視線が移れば意識もそれにつられて変わっていく。けれど、風に乗って運ばれるのは、私以外の全て。
同じ場所は、昨日も、その前の日もそこにはあって、慣れてゆくなかで感覚も止まってしまう。
けれど、もしこの場所に風が吹いていなかったならば、私は石を転がしながら山を登り、そしてその石をまた下へと転がすことを繰り返すのだろう。
けれど、もし風が吹いていなければ、私は同じ想いをいつまでも持つことができるのに。
私の視線は、あまりに移り気で、いま見たものさえ忘れているようだ。西風はいつも私の邪魔をする。
繰り返しのなかで、もう見つけることさえも諦めてしまっている気がする。そして、対象の失われた憧れだけが、私をここへと縛り付ける。
けして触れてはいけない。手を伸ばすことさえ、私を戸惑わせる。戸惑いはいつまでも戸惑いのままに。
考えてみれば、花の名前しか私は知らない。