秒針
目覚めとともに鏡を見つめるあなた。
その姿を見ながら私は、あなたが何ひとつ分かっていないことを知っている。
けれど偽りを受け入れて、それで私は充分。
あなたを本当の姿のままに残して、私は立ち去るだけだから。
あなたは目覚めるたびに生まれ変わるの?
私が得たのは繰り返しじゃない。
夜は爪のように細長く街に伸びて、その襞の裏側へとあなたはすぐに隠れてしまう。
けれど、すべてはお見通し。
問題なのは時間じゃない。それは、すぐに合わせてしまうあなたの弱さ。
あなたってまるで秒針のよう。
それでも負けるのは私一人。
転がって悪ふざけ。それさえ無意味だわ。
髪を撫でて、一言二言。あとは夢に任せるだけで、私は隠れてしまう。そうやっていつも零れ落ちてしまう。
置いていかれるのは私一人。
その時、あなたは隠れない。夜が明ければ光になって見えなくなってしまうあなたの顔。
まるで、すべてを知っているかのよう。
でも、あなたのこと以外、私は何も知らない。
私が立ち去って、残されるのが本当のあなた。
あなたはまだ眠ったまま。
薄もやのなかで何も見えない私。
時を刻む秒針。
何もかも狂いそうになる。
時計を鏡に投げつける。
秒針はようやく繰り返しを止めてくれる。
そして、私が今どんな表情をしているかなんてあなたに分かりっこないわ。